CLINGY

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焦る様子もなく、淡々と説明するその姿に、改めて驚愕する。 だけど、そんな人を手放すことのできない自分にまた落胆する。 「わからない。」 「え?」 「もう、わからないよ。」 窓に近寄り、カーテンを握りしめる。 相変わらず、うんざりするほどの晴天で、太陽の光が私を明るい世界に引きずり出そうとする。 私には似合わない。 ずっとこのままでいたい。 ただひたすらに願う。 「助けてよ…。」 気付いたら溢れ出ていた涙を拭うこともせずに、呟く。 彼が、ゆっくりと腕をまわす。 「ごめんな。」 様々な愛に満ち溢れたその手が暖かい。 彼の胸に穴があくほど、この気持ちをぶつけてしまいたいと思った。 けれど、実際は弱々しく、青白い両手で縋り付くしかできなかった。 馬鹿、だと思った。 何一つ学ばず、何一つ進歩せず。 だけど、何が正解なのか分からなかった。 何が幸せなのか、幸せが正解なのか、正解が幸せなのか。 ただどうしても、その腕の中から抜け出すことができずにいる。 「助けて。」 何から助けて欲しいのかなんて、自分でもわかない。 だけど、まるでそれ以外の言葉が抜け落ちてしまったかのように、ただ繰り返すしかなかった。 私の呼吸に合わせて、彼の手がゆっくりと私を撫でる。 これが、愛? 浮かび上がる疑問を搔き消しながら、本当は気付いていた。 愛なんて存在していない。 だけど、だからこそ、私はここから抜け出せないのだと。
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