3 Kちゃんの家にて

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3 Kちゃんの家にて

次の日から私は忙しく動き回った。 まず携帯電話屋さんに行って、新たに置き型のWiFiルーターを契約する。 これが家にあればとりあえず仕事でのやり取りができる。 昔は光回線がなければ無理だったが、技術の進化で回線を引かなくても高速通信ができるようになった。それが実家に帰る大きな要因となったのは事実だった。 そして、転居届や車の免許の書き換え、諸々の役所周りの手続きに中古車を見に行く。島では一人一台車を持っている。車がなければ暮らせないからだ。 母が運転しているのは軽自動車だから、私は普通乗用車にした。 少し荷物も載せれるワンボックスタイプの車だ。 それの手続きも済ませる。 一通り島で暮らすにあたっての手続きは完了した。 あとは久しぶりに幼馴染のKちゃんに会いに行く。 Kちゃんは一つ年下の妹的な幼馴染で、街から少し入った山手の集落に嫁いでもう三人の子持ちになっている。 私が帰ることをどこからか聞きつけて、早速連絡をくれていたのだ。 だから母の車で街に出たついでにKちゃんの家に寄ってみることにした。 家の住所を頼りに向かった。 「Kちゃん久しぶり!すっかりお母さんだね〜」 「えへ。三人も子供がいたらね〜すっかり母ちゃんって感じでしょ?」 子供の時から変わらないクシャッとした笑い顔でハツラツとしているキャラクターは何も変わっていない。だが出迎えたKちゃんの後ろに隠れている3歳くらいの男の子を扱う姿はすっかりだった。 「うちは男の子ばっかり三人だから大変だよ〜。この子が一番下の子で3歳、その上が5歳と10歳。もうやんちゃでお兄ちゃんは食べ盛りで大変」 「そっか。そりゃあKちゃんも母ちゃんって感じになるねー」 「そうそう。もう毎日運動会みたいなもんよ。あ!ちょっと!こら!それお客さんのでしょ!食べるならあっちにあるから、手を洗って、ちゃんと座っておやつ食べなさい!!」 リビングに5歳の次男が出てきて早速私の目の前のお茶菓子に手を出す。 次男坊は”はーい”と小さく言って洗面に向かっていった。 「ねえねえ、お姉ちゃんはM君ともう会った?」 Kちゃんが興味津々で聞いてくる。 「え?ああ・・・うん。会ったよ。空港まで昨日迎えにきてくれたから」 「へ〜。そっか〜。お姉ちゃんはM君とより戻さないの?こっちに帰ってきたならより戻したら?」 Kちゃんにズバリと言われてしまった。 「え・・・でもM君付き合ってる人とかいるかもしれないし・・・」 「あ・・・・多分いないと思うよ」 「何で?そんなのわかんないじゃん」 「えっと・・・お姉ちゃんどこまで知ってるか分かんないけど、M君もう3年は付き合ってる人いないと思うな・・・」 「何かあったの?」 「何があったかは知らないけど、私の高校の後輩がM君のこと好きで狙ってたんだけど、他に好きな人がいるから付き合えないって振られてたから。それが3年前。で、ほら女も30歳にもなると年齢的に結婚を意識する歳でしょ?だからその後輩もなかなかしぶとく狙ってるんだけど、今年の正月に徹底的に振られたって泣いてたから。好きな人が帰ってくるから無理だって」 「え・・・そうなんだ・・」 「その帰ってくる好きな人って・・・絶対お姉ちゃんでしょ!」 Kちゃんは断言する。 「そんなのわかんないじゃん」 「じゃあ、M君に聞いたげよっか?ヒヒヒ」 Kちゃんが悪戯っ子のような笑い方をして私の顔を覗いてくる。 「大丈夫!ちゃんと自分で聞きます!」 思わずそう断言していた。
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