『中野』

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『中野』

(電車なんていつぶりだ?) 私は駅の改札口にいた。昨晩日野に連絡すると、日野も今日は休みということもあって会う約束をした。 運送会社勤めの私達は定休日というものはなく、休みはシフト制だ。 今日は酒を飲むかも知れんということで電車で移動しようと日野が提案した。 改札口付近の喫煙所で煙草を吸って日野を待っていたら背後から日野の声がした。 「神谷ーっ!」 振り返ると50mほど先に日野が立っており、小走りでこちらへ向かってきた。私を呼んだと同時に日野は煙草に火をつけていた。相変わらずせっかちである。 「おつかれ!」 「お前あんな所から煙草に火つけて走ってくんなよな(笑)喫煙所の意味ねぇじゃん」 「いいんだよそんなこたぁ。喫煙所で吸ってるだけマシだ」 「んで、今日は何する?今日は美加も買い物とか行ってるみたいだし俺は何も予定ないぜ?」 「あ、そうなの?じゃあ遠慮なく遊べるな!んー…」 日野は少し考えてから 「お前この前、ちょい悪なことしたいって言ってたよな?」 と言ってきた。 多分私の思っている悪と日野の悪は意味が少し違うが、私は頷いた。 「じゃあさ、ギャンブルいこーぜ」 「ギャンブル?」 「おう、ギャンブル。パチスロか競馬どっちがいい?」 両方行ったことが無かった私はどちらでも良かったが、機械に金を掛けるより生きている馬を選んで金を掛ける競馬の方が面白そうだと思った。 「うーん…競馬かな?」 「よし!じゃあ競馬場いこう!こっから急行乗れば3駅で着くから」 日野はそういうとスキップしながら切符売り場に向かった。 「うわ、人すごいな。競馬場以外に何かあんのか?」 「これ全部競馬場に行く人だぜ」 「まじか!?」 私は開いた口が塞がらなかった。競馬というと、小汚い親父が馬券片手に叫んでいるイメージがあったからだ。 だがここには若い男女のカップルや家族連れまで様々な人がいた。 「あ、そうか。お前ギャンブルしたことないってことなら競馬場に来るのも初めてだよな。今はな、競馬場は家族連れでも楽しめるよう子供の遊び場やフード類も充実してるんだぜ。ちょっとした商業施設みたいになってんだ」 「すげぇな…全然知らない世界があったわ」 「だろ?まぁ俺らも楽しもうぜ」 そう言うと日野そそくさと馬券の券売機に向かった。 私は日野から事前に貰った【初めての競馬】と書かれたパンフレットを見ながら賭け方を選んだ。 「単勝より三連単ってやつの方が勝った時の金額高けぇのか…」 「そりゃあ三連単の方が当てるの難しいからな」 「じゃあ俺、三連単にしてみるよ」 「おっ?ギャンブラーだね神谷さーん」 日野はケラケラと笑っていた。 「ちなみにどの馬に賭けるんだ?」 「7・1・3」 「根拠は?」 日野はニヤニヤしている。 「好きな数字の順番」 「なんだそりゃ!まぁ初めてはそんなもんか」 日野は大笑いした。その笑いっぷりに少しイラついたが我慢した。 日野も馬券を買い終わったようなので飲み物を買い、外へ出た。 外は建物の中よりも人がひしめきあっており、コースである芝生のグリーンはもの凄く濃くて綺麗だった。 馬を間近で見たかったがコース付近の鉄柵の所には記者を初め、家族連れが陣取っていたので我々は少し上のベンチに移動し、そこに腰掛けた。 座るまで気付かなかったが、鉄柵の所より上からの方が見下ろせる分、レースが見やすい。 もうすぐレースが始まる。 スタートの位置に馬がセットされ、巨大なモニターにはその映像が流されていた。 「パンッ!」 その音と同時に馬がいっせいに走り出した。馬のスピードは想像以上だ。 「よっしゃあ!いけーっ!!」 横で日野は立ち上がって応援していた。その姿に私は失笑しつつ、レースを見守った。 そして数十秒後、一頭の馬がゴールイン。 その後、間髪入れず全ての馬がゴールしレースは終わった。 あっという間だった。 日野はというと、生気を抜かれたように下を向いていた。どうやら外したようだ。 私はというと適当に賭けたので、そもそも当たるはずないと順位まで見てなかった。 モニターを見ると順位通りに馬の番号と名前が表示された。 すると急に日野が私の方に振り向き、「ちょ!お前馬券見してみ!」と私の手から馬券をむしりとった。 そして私の馬券とモニターを交互に見ると 「7・1・3…って、お前当たってんじゃん!」 日野は爆笑した。 「嘘だろ!?いくら!?」 私も興奮を隠せなかった。 「とりあえず払い戻ししにいこーぜ!」と日野が言ったので、先ほどの券売機の所まで戻り、私の馬券をそこに入れた。 すると画面には七万二千円と表示された。 「すげぇ…千円がこんなになった…」 私は放心状態だった。 「ギャンブルもなかなか楽しいもんだろ?」 日野は嬉しそうだった。 「やべぇな。依存してしまう人の気持ちが分かるよ」 「だろ?そんで次どーする?まだレース残ってるけど。やるか?」 「いや、もういいよ。このビギナーズラックを大切にさしてもらうわ。それよかこの金で他の所行って遊ぼーぜ」 「いやいやそれは悪いって!」 「んなこといいんだよ。お前に誘ってもらって来た結果だからな」 「そうか?んじゃあお言葉に甘えさせてもらいますぅ」 日野はわざとらしく頭をペコッと下げた。 「ほんで次は?なにする?」 「じゃあ風俗にでも行くかっ」 「風俗!?」 てっきり焼肉にでも行くのかと思っていた私は驚いた。 「おめぇも嫁とばっかSEXしても飽きるだろ?たまにゃ違う子としてみるべきだよ」 「そうか?じゃあ行くか…風俗」 「おうよ!」 そして俺達は競馬場を後にした。 競馬場の最寄り駅から電車に揺られること20分。 目的地への最寄り駅についた。 私はまったく知らなかったが日野いわく、ここら辺は有名な風俗街だそうだ。 時刻は16時。 まだ夕方だが秋空が紅色に染まっている。そして日野に連れて来られた風俗街のこの街は既にネオンの看板でギラギラと光輝いていた。 行ったことがない私でさえ風俗街だとすぐに分かった。 少し大袈裟な呼び込みをしている黒服の店員がいる。 ああいう店に入るのかと少し緊張していたら日野が 「大丈夫だって!付いてこい」と背中を押した。 日野は何件もの風俗店と店前にいる黒服をまるで空気のようなかわしながら目的の店に向かった。 でかでかと【トライブ】と看板が出ている。 「ついたぜ。ここだ」 私には他の風俗店と何が違うか分からなかったが、ここは日野に従い一緒に店に入った。 「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」 てっきりこういうお店は胡散臭い店員が出てくるとばかり思っていたが、この店の店員は執事のように丁寧な対応で俺達を迎え入れてくれた。 「2名で。すぐいける子どれ?」 「2名様ですね?かしこまりました。すぐいける女の子はですねー、まどかさんとしのぶさんです」 執事のような店員はそう伝えるとパネルに指を指した。 まどかという女性は、歳は25歳前後で少しギャルっぽい。 しのぶという女性は写真では着物を着ていて、見た感じ歳は32、3歳ってとこだ。 「神谷はどっちがいい?」 「どっちって…初めてでよく分からんしどっちでもいいよ」 「今日はお前の奢りだろ?だからそんなこと言わずに先に選べよ。こんなもんパッと見で決めりゃいい」 「そうか?じゃあ、まどかさんで」 「おっけー!」 日野はそう言うと店員にコースとどっちがどちらの女性かを伝えてくれた。 とりあえず時間は60分で料金は2人合わせて四万円だ。 「やっぱ風俗って高けーな」 私はそう言いながら会計を済ませた。 日野は笑いながら 「ま、風俗はこんなもんさっ。今回はソープだけど風俗と言ってもピンサロとか色々あるんだぜ?だけどソープで60分二万円って全然格安だって」 まぁたしかに日野のいう通りだ。風俗に行ったことがない私でもソープは本番アリだということは知っていた。たった二万円で可愛い子とSEXできるなんてとてもお値打ちだ。 普通に出会っていたら、酒が入ったワンナイトとかではない限り二万円の出費でSEXまで持ち込むのはかなり厳しいだろう。しかも可愛い女性ともなるとそもそも出会える確率も低い。 「それでは参りましょう。こちらへどうぞ」 私は自分に言い聞かし、店員の後に続いた。 「こちらの部屋で少々お待ちくださいませ」 店員は深々と頭を下げると部屋を後にした。 通された部屋は4畳ほどの部屋で、敷布団が敷いてあるだけでこれといって特徴もない普通の部屋だった。 しかしよく見ると枕元にはコンドームやローション、バイブレーターなどアダルト品が勢揃いしていた。 (あんなの使ったことねぇわ) そう思いながら置いてあるアダルトグッズをまじまじと見ていたら 「コンコンッ」と扉がなった。 一瞬ドキッとしたが緊張が悟られないよう「どうぞ」と声をかけた。 「失礼いたします」 扉が開いた。 そこにはパネルで見たままの美しい女性がミニスカート姿で立っていた。 「はじめまして、まどかです。えーっと…」 「か、神谷です、神谷 旬です!」 「じゃあ旬くんですねぇ」 女性はそう言うと私の隣にスッと座った。 「まどかって呼んでね?旬くんはこういうお店は初めてですか?」 「い、いや、2.3回目かな?」 なぜかくだらないプライドが邪魔をし嘘をついた。 しかし今思うと、緊張で声があがっていた私にまどかは気付いていたと思う。 「じゃあ時間がもったいないのでさっそく始めますか」 まどかはそう言うや否や服を脱ぎだしあっという間に下着姿になった。 その光景を見て唖然となっていた私に、「旬くんのは私が脱がしてあげるねっ。はい、バンザーイ」 私は言われるがままバンザイをし、服を脱がせてもらった。 「はい、では下も脱ぎましょうね〰️」 まどかは慣れた手つきでベルトをカチャカチャと外し、ズボンも服と同様にあっという間に脱がした。 私はパンツ一丁にされ、まどかの言うがまま布団に横になった。 「恥ずかしいよね。ふふっ可愛い」 するとまどかはパンツの上から私の股間を触りだす。 緊張とは裏腹に私の体は正直に反応した。 「ふふっ、もうこんなになっちゃった」 まどかはそう言うと「えいっ」とパンツを一気に下ろした。 そこには私の大事なものがこれでもか!という具合に反り立っていた。 それを見たまどかは 「えっ…ものすごく大きいね。それに形も綺麗…」 そう言うと先端をペロッと舐め、口に頬張り出した。 「ジュポッ……ジュポッ…」 いやらしい音が部屋に鳴り響く。 暖かい口の中でまどかの舌が激しく動き回っているのが伝わる。 (イ、イキそうだ…) 情けなく思ったが、そのことを伝えようとまどかを見たら何か様子がおかしい。 さっきまで涼しげな顔していたまどかが汗をかきながら必死で私のモノをジュポジュポと夢中で舐め回している。 目もとろけそうだった。というか完全に目がいっていた。何かがおかしい。 「ちょっ!やめっ」 ドビュッ やめろと言い終えると同時ぐらいにまどかの口の中で射精してしまった。 まどかはこぼすともったいないという感じで私の精子を綺麗に吸い取ると「ゴックン」と飲み干した。 「旬くんの…とても大きくて綺麗な形だったからつい変な気分になっちゃった。ごめんね口だけで終わっちゃって…」 私は味わったことのない快楽に少しの固まっていたがすぐに我を取り戻した。 「ほんとだよ。こんなんじゃ60分もいらなかったじゃん」 「そんなに怒らないでよ。ね?次来てくれた時はたくさんサービスするから」 「次って…そんなのいつになるか分からないよ。それよか俺なんか客の一人でしかないからすぐ忘れちゃうんじゃない?」 するとまどかは「そんなことないよっ!」と否定した。 声の張りに少し驚いたが、 「なんでそんなことに言い切れるの?」と聞いた。 「分からない。けど旬くんを一目見た時から他のお客さんにはない何かを感じたのよ。それは上手く言えないんだけど…けど決して営業トークとかではないから信じてほしいな」 「どうだか」 嬉しい気持ちもあったが、本番もできず二万円が飛んでしまった苛立ちの方が強かったので、少しきつい言い方になってしまった。 「怒ってる…よね?ほんとにごめん。お金に関してはお店のことだから私じゃどうしようもできないし返金とかできないけど…せめて時間いっぱいまで私のこと好きにしていいからさっ」 「別にいいよそういうのは」 そう吐き捨てると私は立ち上がり、その場を後にした。 入室から15分ほどで店を出た私は日野が出てくるのを待った。 もちろん日野は私がもう店を出ているなんて知らない。だから日野が出てくるまで小一時間ある。 「暇だな…」 私はそう呟くと、目の前にあった灰皿が備えついたベンチへと腰を下ろした。 ズボンから煙草を取り出し火を点けた。 「フーッ」 頭上に煙が蔓延する。 初めての風俗。結婚してから初めて妻以外に裸を見せた。時間いっぱい楽しめなかったけど悪くはなかった。 すると右の方から気配がしたので煙草を加えたまま視線を右に向けた 。 すると真横にサラジャがいた。 通行人はサラジャに気付かずどんどん通りすぎて行く。 どうやら俺以外にサラジャは見えないらしい。 いきなりの出来事に少しギョッとしたが、初めて見た時ほどではなかった。 「旬よ。どうだ気分は」 「気分?まぁ悪くはなないですね。今日は初めての経験をしたのでずいぶん楽しめました」 他の人にサラジャは見えていないのだから普通のトーンで会話をしていたら不自然なので、少し控えめのトーンで返事をした 。 「そうか。ギャンブルに風俗。どちらも今までお前が避けていたものだ」 やはりサラジャは近くにいたらしい。そういえばサラジャは俺の守護霊のようなものだと言ってたな。 「たしかにそうですね。でもおかげ様で結構楽しめましたよ」 「それは良かったな。この調子でどんどん初めての経験をすればいい。そうすればおのずと人生は変化する」 「そうですか。わかりました」 するとサラジャはサーッと姿を消した。 (初めての経験ね) サラジャが現れたせいで、てっきり煙草の存在を忘れてしまっており煙草は灰となりフィルターだけになっていた。 そしてもう一本火を点けた。 するといきなり何者かが私の横に腰掛け、肩を組んできた。 驚いて隣を見ると、スーツ姿でツンツン頭の細身の男がいた。年齢は40歳ぐらいか? 何だこいつは? 「お兄さん、もしかしてどっかお店探してる?」 何だキャッチか。 「いえ、もう遊び終わったとこです」 「あっ、そうなの?そりゃ残念。うちの店ここだから機会があれば寄ってね」 そう言い終わると男は名刺を渡してきた。 「中野…さん?」 「そう、中野大介!大ちゃんって呼んでくれてかまわねぇよ」 「いきなりそんな気安く呼べませんよ」 「そりゃそうだ。大ちゃんなんて呼ばれたらぶん殴ってるわ」 「何だそれ、無茶苦茶ですね」 私は思わず吹き出した。中野は見た目のわりにくどくなく、話しやすいおっさんだった。 「ところで1人こんなとこで何してたの?」 「ああ、お店でまだ遊んでる友達待ってんですよ」 「そうなの?バラバラの時間に入ったの?」 「いえ、同時に入りました」 「それにしちゃあ結構な時間待ってるね。さっきから座ってたでしょここ」 どうやら中野は私を遠目から見てたようだ。 「そうですね。もう40分?ぐらい待ってます」 「じゃあ君は相当な早漏野郎なんだなっ」 「違いますよっ。女の子がスイッチ入っちゃったみたいで…」 「へぇー、そんなことあるんだ?こういうお店で働いている子は慣れてる分機械的なサービスになりがちなんだがな。それでよくクレームにもなるよ。愛が感じられねぇってな(笑)客からそう言われるたびに愛が欲しいなら嫁だけで我慢しろ!って思うけどな」 「まぁそうですよね。お店で愛を求めるのは違いますよね」 「だろ?金で体は買えても愛は買えねぇっつうの!」 愛について真剣に語る中野を見ると苦笑いしかできなかった。 「ちなみに君にスイッチ入っちゃった女の子の店はどれ?」 私は先ほどの出た店を指差した。 「あー、トライブさんね。あそこは値段の割に可愛い子が多いのよ。だからすげー人気でよく待たされてるお客さんを見るよ。君センスあるね」 「いえ、ここはもう一人の友人に連れてこられたんです。俺はこういう所今日が初めてで…」 「そりゃあ驚いた!じゃあまだまだ卵ちゃんだ。で、どうだった?風俗も結構良いもんだろ?」 中野はわざと悪っぽい顔をした。 「そうですね。あんな可愛い子と遊べるなんて夢みたいでした」 私は感じたままの感想を言った。 中野はうんうんと腕を組みながら頷いた。 「ありがとうございました〰️」 声がした方を振り返ると、日野が店から出てきた。 日野はすぐに私に気付いたようで近づいて来る。 「あ"っ」 日野と中野は顔を合わせるとほぼ同時に声を発した。 「もしかして君が待ってた友達って日野のこと?」 中野が目を真ん丸として聞いた。 「はい、そうですけど…」 「おーっ!」と中野は声を上げた。 対して日野も 「え?中野さんじゃん!どうしたの?」と中野に近寄った。 どうやら二人は知り合いのようだ。 「どうゆう関係?」と私が聞くと 「大学の頃の先輩だよ。先輩というかサークルのOBだな。中野さんが現役の頃はまだ俺生まれてねぇけど」 日野は学生の頃サークル活動に力を入れていたようで、中野もよくOBとして顔を出していたようだ。 「へぇ、そうなんだ。じゃあ改めてご挨拶を…会社で日野と同期の神谷です」 すると中野も深々と頭を下げ 「改めまして、中野です。いつも日野がお世話になっております」 「いや、誰目線だよっ」 すかさず日野がツッコミを入れた。 どうやら日野と中野は仲が良いみたいだ。 中野も見た目はチャラついていて派手だが、見た目とは裏腹に落ち着いた雰囲気を感じるダンディーなおやじだ。 多分あと10年もしたら日野もこんな風になるんだろうな。 想像すると少し笑えた。 「んで、中野さんこんな所でなにしてんの?」 「仕事だよ。仕事っつってもキャッチだけどな」 「どこの店 ?」 「そこの角にある緑のネオンの店」 「あ、風俗か!ごめん中野さん!俺ら今遊んできたとこなんだ」 「神谷くんに聞いたよ。一人で煙草吸って退屈そうだったから声かけたんだよ。店探してますか〰️?って。じゃあもう遊び終わったって言うから少し話してたんだよ」 「え?神谷と?すごい偶然じゃん。それよか神谷は何でそんな早く店出てたんだ?」 私が答えようとすると横から中野が 「なんかさ、すんげーテクの女の子にやられたみたいだぜ」と笑った。 (余計なことを…)と少しムッとしたが、日野の反応は意外なもので 「え!?そんな良い子だったの?くそ〰️!俺が先に選べば良かった」と嘆いていた。 「ってことは、お前が選んだ方はダメやったんか?」 「ババアだよババア!てっきりパネルに騙されたよ!」 日野はカンカンだった。 いや、お前は1円も金出してねぇじゃんとツッコミを入れかけたが、無性に日野が可哀想だったのでやめておいた。 「そんで2人はこれからどうするの?」 中野が聞いてきたので日野は私の方に目をやり 「んー…どうしよっか?そろそろ飯でも行くか?」 スマホの時計に目をやると時刻は18時前。 そろそろ良い時間だ。 「そうだな。飯でも行くか」 私が答えると中野が 「じゃあさ、俺が飯の美味い所連れてってやるよ。今日はもうすぐ上がりだから少し待っててよ。もちろんおじさんの奢りだ」 「マジっすか!?あざーっす!良かったな神谷!」 さっき会ったばかりの人間と一緒に晩御飯かーと少し気乗りがしなかったが、日野が相当嬉しそうだったので私も中野の提案に快諾した。 返事を聞くと中野はじゃあまた後でと言い残し、その場を後にした。 「中野さんてどんな人なんだ?」 「中野さん?あの人は遊びの天才だ。知らない遊びを知らないっていうか…あ、もちろん遊びって行ってもレジャーとかじゃないぞ?」 「そっちね(笑)結婚とかしてないのかな」 「いや、たしか結婚はしてたはず。娘がなんちゃらって聞いた事あるし」 「そっか。でも言っちゃ悪いけど結婚してて職がキャッチってのもなぁ」 「多分キャッチは副業だよ。あの人あんなだけどスゲー頭良いから」 「え?そうなんだ。でもたまにいるよなそういう人」 「いるいる」 日野は笑いながら答えた。 その後も今日の風俗の話や仕事の話など、話し込んでいたら中野が現れた。 「おまたせ〰️。じゃ、早速行きますか!」 「どこ連れてってくれるんですか?」 日野が聞いた。 「ん?天ぷら屋だよ。お前好きだろ?天ぷら。神谷くんは?天ぷら嫌い?」 「天ぷら好きですよ。天丼食べたいです」 「あー、その店天丼もあるよ!まぁここで出会ったのも何かの縁だ。今日はいっぱい食えっ」 「あざーっす!」 今後は日野だけでなく、私もお礼を言った。 「ポポンッ♪」 メッセージアプリの通知音が鳴った。 スマホを取り出しディスプレイを確認すると (もし、よろしければ今度映画にでも行きませんか?) 新着のメッセージは橋本杏菜からだった。
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