第1話 その1

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第1話 その1

 もし今、僕の言葉が届いている人が居るなら、僕がこの本に出会ったところから話を始めなければならないと思う。それがこの本の元持ち主である僕の責任だと思うから。  平凡な一般家庭である僕の家は、地方都市の市街地からは少し外れた田舎にあって、風光明媚(ふうこうめいび)な田園風景を望む新興住宅地に立つ二階家だ。  勤勉な一般的公務員である父親がローン返済を頑張ってくれているおかげで、一人息子である僕は、割と広い子供部屋をあてがわれて、贅沢に使わせてもらっている。  両親にしてみれば、一姫(いちひめ)二鷹(にたか)三茄子(さんなすび)なんて、昔ながらの価値観で子供が欲しかったみたいだけど、残念ながら僕一人しか子供は出来なかったものだから、今では諦めているようだった。だから、(はじめ)なんていう捻り一つない名前を付けられた僕は、学校でなんてあだ名で呼ばれている。そんな平和すぎる平和な日々を過ごす平凡な僕は今、実のところ、とても困っていた。それというのも今現在、世間一般に言うところの悪役令嬢なる非常識極まりない、なんとも怪しげな人物たちに、我が家は占領されてしまっていたからなのだ。
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