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東塔の姫
クレア王国第一王女アナスタシアにとって、王城東塔の上階にある部屋が、世界の全てだった。
第一王女のアナスタシアは、幼い頃に母妃が亡くなり、側妃だったエリザベータが正妃になった日に病弱で王位継承にふさわしくない子としてたった5歳で東塔に幽閉されたのだ。
本当のところは、自分の子グレゴリーを王にしたいエリザベータの策略で、アナスタシア自身は健康だったのだが。
エリザベートは、たまに塔を訪ねて来て優しそうな顔をしてアナスタシアに告げる。
「お前のような病弱で、不細工で白っぽい髪の女は、政略にも使われる心配もないから一生ここにいればいいのよ。」
そう言ってくるエリザベータをアナスタシアは厄介者の自分の世話をしてくれる優しい義母と信じていた。
と同時に王女として生まれたのに、不細工な自分は、政略の駒にさえなれないことを申し訳なくさえ思っていた。
塔には世話をする侍女が二人と警護という監視役の兵士が来るくらいだが、塔から見える遠くの山々や湖がアナスタシアを楽しませてくれたし、侍女たちが運んでくれる本を読んで学ぶことも出来たからアナスタシアには不満もなかった。
父である国王と会えないことを除けば。
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