皇帝陛下の後宮

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「いま後宮には何人の女性がいらっしゃるのかしら?」 「私たちも知りません。この宮に来てからお二方のお世話はしましたが、どちらもすぐにいらっしゃらないようになりましたし、誰もいらっしゃらない時もこの宮で私たちは生活しておりますので。」 「前はどんな方が?言えないなら無理にとは言わないけれど。」 「おひとりは、海の向こうの島国から見えた黒髪の姫でした。側妃として認められる事なく、お手がつかないまま2ヶ月ほどで兵士に下げ渡されました。 もうおひとりは、隣国の公爵令嬢でしたが、まだお手付き前に、ある日突然部屋から居なくなっており、陛下からもう世話をしなくて良いので部屋を片付けるようにと伝達されて、それきりです。」 やはりマリナが聞いていた噂の通りのようで、アナスタシアは気を引き締める。 「それで皇帝陛下は、どんな方なのかしら?」 「私たちは、間近でお会いした事がありません。先触れの方が来るとお部屋に入れませんし、式典の時は遠目にしか…でも今年25歳になられた陛下は黒い髪と瞳を持ち、漆黒の覇王と呼ばれる素敵な方です。お声も素敵ですし。」 後宮に入ったのだから、じきに会えるのだろうとアナスタシアは思っていたが、向こうから来ない限り、会えないと分かった。
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