月夜の告白

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東屋のベンチに座ると明るい満月のおかげで、お互いの顔もよく見えた。 「エド様?」 「俺は、今まで自分の気持ちより周囲の顔色を見てどうするか選んできたんだ。お前は王女だから、そんなこと当たり前だったかもしれないが。」 「私は5歳から塔の中だったから、割と自由だったわよ。外には出れなかったけれど。」 「外に出れなくて自由って、なんだよ。」 お互い矛盾に気付き、吹き出して笑う。 「まぁ、なんだ…昔話を聞いてくれるか。俺は、元々父親にとって、いてもいなくてもいい4番目の子で、跡取りの兄がいたから、母親の実家で育てられたんだ。ゆくゆくはその家の養子になる予定だったから、割と自由だったけれど出来のいい子でいないと役立たずと言われそうで必要以上に背伸びしていた。」 「ご自分で甘えを許されなかったのですね。」 「そうだな。その後、戦争や病気で兄たちが死んで、俺は自分の家に15歳で戻された。突然、跡取りだと言われても、そんなこと勉強していないし戸惑ってばかりだった。 なんとか様になって来たかと思えるようになった頃に父親が死んで、後を継いだんだ。その途端、早く妻を娶れ、子を成せと周りからうるさく言われるようになった。 俺はそれまで母親たちの女の争いを見て来たから、誰か女性を好きになることがなかったのもあって逃げ回って来た。」
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