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このままの生活が続くと思っていた日々は、ある日突然終わりを告げる。
「マリナ、あの煙は何かしら?」
いつものように外を眺めていたアナスタシアは、西側の山のふもとに煙が上がっているのを見つけた。
「何ですかね。森で火災になっているんでしょうか。」
「民に被害がなければいいのだけれど。」
そこへもうひとりの侍女ニーナが駆け込んで来た。
「大変です。カリアス帝国が王都近くまで攻めて来たみたいです。」
「グレゴリーは?」
「それが…すでにエリザベータ様と姿が見えず、重臣たちも我先に逃げ出したようです。」
国を民を守るはずの王や重臣たちが一番に逃げ出すなんて…
そう考えているといつも警護を担当している兵のひとりが部屋を訪れた。
「こちらを陛下からアナスタシア様にとお預かりしました。」
出された書類と箱を受け取り、確認する。
『グレゴリー・クレアキンは第12代クレア王国の国王を退位し、アナスタシア・クレアキンに王位を継承する。』
とサイン入りで書かれており、箱には国王印章が入っていた。
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