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東屋のベンチに二人で座り、蛍を眺めながら取り止めのない話をしていると楽しい。
「いま、アナスタシアを正式に妻にするために準備している。良かったら、これを受け取って欲しい。」
エドが取り出した箱には、アナスタシアの瞳のような濃い青の石がついた指輪が入っていた。
「はめていただけますか?」
エドはアナスタシアの左手薬指にそっとはめてくれた。
「気に入った?」
「うれしいです。」
エドにもたれかかるように座るとアナスタシアの髪を撫でながら、そっと頬にキスを落とされる。
アナスタシアにとって、とても幸せな時間だった。
名残は惜しいが、あまり長い時間だとリリー達や巡回兵に見つかりかねない。
仕方なく身体を離すとエドは、
「また来るよ。」
そう言って暗闇に紛れるように帰ってしまった。
嬉しいけれど寂しい。
ひとり残ったアナスタシアは、しばらく蛍を眺めているのだった。
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