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離宮と言われる場所に到着し、馬車をエドに抱き抱えられて降りたアナスタシアが見たのは、自分の生まれ育ったクレアの城だった。
「エド…」
「慣れた場所の方がいいだろうと思って、マリナを探しに来た時に離宮に整備しておいたんだ。俺はずっと一緒にはいられないけれど、時間を作って会いに来るから、ここで療養して早く元気になって欲しい。」
エドに耳元でこっそりそう言われて、アナスタシアはうなづいた。
さすがに塔ではなく、代々王妃が使っていた部屋がアナスタシアの居室に用意されていた。
「エリザベータの使用していた趣味の悪い調度品は片付けて、アナスタシアの好みに合わせたよ。売ったお金で買い替えた。」
エドがそう言ってウィンクするので、アナスタシアは思わず笑ってしまった。
それでもリリーやレインの手前、エドとは皇帝陛下の寵姫と陛下の命令で世話係をしている臣下の態度は崩せないからと気を張っていた。
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