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「あ、あの…陛下?」
「アナスタシアに一目惚れしてから、他の誰もいらないと思っていた。私は…あーもう面倒だ。俺はお前だけがいればいいんだ。なんとかアナスタシアを正妃にする算段がついたから、ちゃんと迎えに行って、あの離宮で話したかったのに、伯父上が余計なことするから、予定がくるったじゃないかぁ。」
「陛下?」
「いいかげん、名前を呼んで欲しい。」
「それは…」
「いつものように俺の名前を呼んでくれ。」
アナスタシアは陛下の名前を呼んだ事はない。
陛下の名前が『アレックス・エドワード・カリアス』であることを知識としては知っていたが、帝国で名前で呼んで慕っていたのはただひとり。
「エド様?」
「そうだよ。アナスタシア。」
そこにいるのは髪は黒いが、確かに優しいけれど、ちょっとやんちゃな雰囲気のエドに間違いなかった。
なぜ気が付かなかったんだろう。
纏う雰囲気は陛下の時と全く違うとは言え、髪色以外瞳も精悍な顔も一緒なのに。
「まぁ、皇帝の時はなるべく感情を顔に出さないようにしているし、エドの時は潜入調査しやすいように皇帝の時と何もかも変えるようにはしてたけど、全く気付いてなかったのか。」
「はい。だから陛下の正妃になるならエド様とはさよならしなければいけないと思っていました…」
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