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「お母様、聞いて欲しいことがあるの。」
8歳になった娘、オリビアはアナスタシア譲りの青い瞳と銀髪の子だ。
「なぁに?」
「アーロンがね。赤毛の女の子と仲良くしていたの。私みたいな髪の子は嫌いなのかな。」
「お父様は、お母様のことを月光の乙女って言って一目惚れしたそうだけど、アーロンはオリビアのことを赤ちゃんから知っているから、髪色で嫌いってことはないと思うわよ。」
14歳になったアーロンは、学院で学ぶため寮に入って、なかなか会えない。やっと長期休みに帰ったのだが、同級生の女子と一緒にいたところにオリビアは出くわしたらしい。
「大丈夫よ。あなたはアーロンにとってもだいじなお姫様だから。」
心配そうな娘に内緒の話を少しだけ与える。
6歳の年の差はあるが、アーロンはオリビアにべた惚れだ。
まるであの頃のエドをみているように。
もちろん、エドとアナスタシアはそれをよーく知っている。
アーロンは、おそらく同級生の女の子に聞いて、3日後のオリビアの誕生日プレゼントを準備しているのだろう。
「それより、お誕生日のお祝いのドレスを決めましょう。お父様の用意したのとお母様のとどちらにする?」
「うーん。お父様のはかわいいけど、お母様のはちょっと大人っぽくなるから、お母様のかな。アーロンにふさわしいレディになりたいもの。」
そう言って笑う娘を見ながら、アナスタシアは幸せだと思った。
愛する夫とかわいい子どもたち。
塔の中にいた頃は、こんな幸せが自分のものになるなんて思ってもみなかった。
これも皆、あの日クレア王国最後の女王としてエドと対面した事で掴めた未来。
「そうね。オリビア、常に自分が民に生かされている皇女である事だけは忘れないで。そうすればステキなレディになれると思うわよ。」
まだまだ幼いところがある娘に向かって、アナスタシアは優しく告げたのだった。
《f i n》
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