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「君を見つけた時本当にどうしようかと思ったよ。……でも飛び降りる気がないからってもうあんな危ないマネしちゃダメだよ」
そう諭すような口調で言う男に、私はどうも落ち着かなくて男から視線を外した。
「でも、飛び降りようとしてたわけじゃないならどうしてあんなところに?」
当然の疑問だろう。ちらりと男の方を向くと小首を傾げている。柔らかそうな髪がふわりと揺れた。
「……気分だよ」
「気分?」
「飛び降りれば、……死ねば楽になるかなって」
そう思ってあそこに立ってたけど、やっぱり私にはそんな勇気なんかなかった。
「やっぱり、飛び降りようとしてたじゃん」
男は意味がわからない、というように眉間を寄せる。
「そうだね」
「どうして? どうして、死にたいの?」
私はその問いに一瞬目を泳がせた。
大した理由はないのだ。死にたい理由なんか。
「……死んでないから、生きてるだけ」
私は小さくつぶやく。男はよく聞き取れなかったのか何も言わずに静かに私を見つめていた。
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