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「私は、……私には夢もやりたいこともない」
男は私の言いたいことがわからないのだろう、困惑した表情を浮かべる。私はそんな男から目を逸らした。
「それに……もう疲れたの。笑うのも、いい子でいるのも、人の顔色を伺って生きるのも。全部疲れた。」
私は何故か男の顔が見れなかった。堰を切ったように言葉が溢れた。
「……なんのために生きてるのかな、生きる意味あるのかなって考えて。……未来のこと考えるとどうしようもなく苦しくなって……」
「それで死ねば楽になる、か」
男は感情が読めない声で私がさっき言った言葉を復唱する。
それは甘えだってわかってる。この世界には私よりもずっと辛い思いをしてる人がいるのも知ってる。
だけど、毎晩ベッドに入ると考えてしまう。なんのために生きてるのか、生きている意味あるのかなって。
毎日毎日、家族が求める自分を、友達が想像する自分を、先生が理想とする生徒を演じて、他人の顔色を伺いながら生きる。
学校で勉強して、それが将来役に立つかも分からないのに必死になって。他人に好かれたいがためにいい子のふりをする。
「もう、疲れたよ」
「……じゃあ」
そう言って座り込んだ私に男は静かに口を開いた。
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