母のパン

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お詫びと言って取り出した二組のお弁当箱と材料。 「明日の朝、手伝ってあげるからね」 そう言って、いつもより早めに寝室へと消えていった。 あの時の弁当は、結局ほとんど母が作ったものとなったけど、彼が一番気に入ったのはベーコンで紫蘇とチーズを巻いて焼いたものだった。 それは母が、料理をしない私にでも作れるように提案した唯一、母の手を借りずに作った料理だった。 焼きたてのパンからは、あの時の匂いがする。 約束したマカロンが作れず不安げにフライパンの前に立つ私の隣で励ます母。 「大丈夫! 男の子は、だいたいベーコンが好きなもんだから」 何の根拠もないのに笑う母から、根拠ない自信がついた。 その時から、母になった今まで弁当にはベーコンが入る。 旦那はもちろん、息子も好きだから。 母が焼いたパンを、家へ持って帰る。 息子と旦那は、パンを見ると目を輝かせた。
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