母のパン

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母のパン

ふわふわのパンは優しさで膨らみ、カリカリのベーコンは遊び心、紫蘇は懐かしさを含んだ香りをさせて焼き上がった。 昔から料理上手だった母は最近、パン作りにハマっている。 ハマったのはつい最近、子供の頃に作ってもらった記憶はない。 けれど、焼きたての暖かいパンは懐かしい記憶を呼び起こした。 初めて出来た彼氏に、プレゼントしようとしたマカロン。 オーブンの調整が分かっておらず、黒焦げになった。 翌日のデートにも間に合いそうにもなく、悔しくて泣きそうになっていると、母がマカロンの一つを食べた。 「コレはコレでビターで美味しいわね」 そう言って、全部平らげた。
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