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この身体は僕のなのに、僕の思う通りにはならない。
いくら切望してもうなじの噛み跡は消え、フェロモンを垂れ流してアルファを引き寄せてはその精を欲する。
僕が愛しているのは颯介さんだけなのに。
身体も颯介さんのものだったはずなのに、いなくなってしまった人をいとも簡単に忘れてしまった。
それが耐えられなかった。
颯介さん以外のアルファを誘い、求めるこの現実が、僕の心を絶望で埋めつくす。
それが怖くてたまらなかった。
それを乱用してはいけないということは分かっていたけど、僕は飲まずにはいられなかった。
だけど、僕はそこまでの思いを先生には言わなかった。言ってもきっと伝わらないと思ったからだ。
なのに先生は辛そうな顔をした。
「重要なのはね、飲んでいた期間じゃないんだ。その薬を飲んでいたということと、緊急抑制剤が効かなかったという事実なんだよ。これを飲まなければならなかった何かが早瀬くんの中にあるのかもしれないけど、いけないことにはそれなりの理由があるんだ」
きっと先生は僕の中の絶望を知らない。だけど、それが存在することを察している。
「今の早瀬くんは薬物の乱用によって抑制剤が全く効かない身体になっている」
その言葉に僕ははっとした。
「効かない?」
「おそらく身体に耐性がついてしまったんだと思う。そもそもそういう理由で常用してはならなかった薬だ。説明書に書いてあっただろ?」
説明書は読んでいない。海外ので英語だったから・・・。ただレビューを見て一番よく効くやつを選んだだけだ。
「困ります。抑制剤が効かないなんて」
オメガにとって抑制剤は生活していく上で欠かせないものだ。これがなければいつアルファに襲われてもおかしくない。
「気の毒だけど、オレからは今後の治療の提案しかできない。それを君がやるかどうかはまた、君の判断だ」
治療?
「治るんですか?」
「治りはするけど、かなり長期の治療になるよ。まずは抑制剤を飲まずに過ごしてもらって、身体をリセットする必要がある」
抑制剤を飲まない?
「困ります。それじゃあ生活出来ません」
「意地悪で言ってるんじゃないんだよ。実際効かないから飲んでも意味が無いし、身体の耐性を強めてしまうだけだからね。
抑制剤を飲まずに何度か発情期を迎えてもらって・・・最低でも2回だね。そのあと、弱い抑制剤から徐々に試していって早瀬くんに合うものを探していく感じかな」
発情期を2回?半年も抑制剤なしで、その後も試すって・・・すぐに見つからなかったらどんだけ時間がかかるんだ・・・?
「その間は無防備になるから、病院で管理入院してもらう形になるね。毎朝フェロモンチェックをして大丈夫ならここから出勤してもらう感じだ」
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