第1回:契約

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[4]  俺は漆戸徹也の写真を再び眺めながら、 「小笠原さん、あんたが俺にこれを見せたのは、パンサラッサとの抗争(けんか)に備えて、ボスの顔を憶えておけということだね」 「まあ、そうだ。抗争になるかどうかは、現時点ではわからんが……」  俺の「けんか発言」に小笠原は苦笑していたが、表情を改めて、 「やつらの目的が『都内のスライムを全て駆逐する』だけとは考え難い。何か他の、真の狙いがある筈だ」 「結局、勢力拡大のためじゃないのか?だって、パンサラッサは世界征服を標榜しているんだろう?そんなものにどんな意味や価値があるのかはさておき」 「やつらは本気だよ、魔宮君。大真面目で世界征服に取り組んでいるんだ」 「」  俺はくすくす笑いながら、そう云った。小笠原は半ばあきれた表情で、 「随分嬉しいみたいだな。何がそんなに面白いんだ?」 「あまりにも荒唐無稽な話だからさ。ここまで突飛だと笑うしかないよ」 「君も相当突飛な存在だがね」 「俺が?」 「昼はアクター、夜はハンター。そんな二足の草鞋を履いているのは、東京広しと云えど、君ぐらいのものだよ」 「全ては成り行きさ。俺が自ら望んでこうなったわけじゃない。あの日、元締めがスカウトしてくれなかったら、俺はおそらく、今もヒーローショーのバイトを続けていたと思うよ」 「なかなか見事なスーパーヒーロー振りだったと聞いている。?」 「勿論演(や)らせてもらった。案外受けたよ。俺は華のない役者だけど、殺陣や荒事に関しては多少自信がある」 「えっ。君は華がないのか」 「悔しいけどないよ。せめて、あんたのオーラ量の半分…いや、四分の一でも俺にあればなあ」  小笠原は頭(かぶり)を振ると、 「俺にはわからんな。君ほど容姿に恵まれた青年は滅多にいないだろうに」 「華は天賦の才。努力や精進では決して得られない。神様の贈り物だからね」
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