1.オタク令嬢はめげない。

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やってしまった、それは一番イリアが分かっていたことだった。 気合いを入れて身支度を整えてくれた侍女達に申し訳なく思いながらも、イリアは動きやすさを重視したドレスに颯爽と着替えた。 母の形見の黒リボンで髪を一つに結い直し、鏡に映ったぱっとしない自分の姿を見て何故か安心する。 ーードレスや化粧や宝石なんかで着飾ったところで、中身がこんなのだから似合わないに決まってるわよね。 こんな格好をエリーに見せたら雷が落ちるのは十分承知しているが、あんな格好でいる方が惨めに思えて仕方なかった。 部屋に居ればエリーがやって来るのも時間の問題だ。イリアはいつものように鞄に荷物を詰めて、物置部屋の窓から逃げ出すように外へと出た。 中庭を抜けて、十字架が象られた生垣のすぐ横にある秘密の抜け道を使って一気に屋敷の外へと抜け出した。 サラリと流れる風が心地よく、イリアの頬は自然と笑顔に染まっていく。 ふと道の先を見れば、先程縁談をしていたユインを乗せた馬車が街へと進んでいくのが見えて、大きく手を振った。 「生憎、私は何かに取り憑かれているわけではないの!研究というものに惹かれて追求している、世界に名の知れた発明家の娘よ!」 もう二度と会うことのない相手に向かって、聞こえるわけはないがハッキリとそう言い放つとイリアの心はすーっと軽くなった。
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