1.オタク令嬢はめげない。

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取れたのは見覚えのない小さな鍵で、イリアは首を傾げながらその鍵をまじまじと見つめた。 「お父様がここまでして大事に保管する物って、一体何かしら?」 見つけてしまったのだ、これは鍵穴を探す他ないとイリアは鍵を片手に書斎から出て部屋を見て回った。 だが、困ったことに鍵穴が存在しそうな物がこの家にはなかったのである。 どれもこれもなおざりに置かれた研究で使っていたであろう、物品達がそこら中にあるのみ。 そもそもこの家に金目の物が無いのだから、鍵が必要とするものが置かれていないのだ。 「何かヒントが書斎にあったりしない……かあ」 書斎以外の部屋全てを組まなく散策したがどこにもそれらしき物は見当たらず、イリアは再び書斎へと戻る。 だがそこには壁一面の本達だけがあるだけで、鍵穴を挿す場所はまずない。 行き詰まったとため息を着いて、ふと手にしていた書物を見下ろした。 「この本に鍵が付いてたり?」 中身はちゃんとした薬草の下処理と、危険薬草の成分抽出方法の説明がズラリ。 間違いなく本として成立している。もう探す宛てもないと諦めかけたその時。イリアの中でざわめく一つの違和感に、そっと指を顎に添えた。 ーーどうして成分抽出方法には、危険薬草って明確に主となる言葉があるのに、下処理だけ薬草ってタイトルに書いてないの? タイトルを静視しながら、イリアは一つの仮説を立てた。 ーーこの鍵には鍵穴が存在する何かはなく、この鍵がヒントになるという繋ぎ目の役割だったとしたら。そしてこのタイトルに鍵があるという印だとしたら……。 イリアは一か八かで書斎の床に敷かれたカーベットを捲りあげ、そこにあったものに瞳を輝かせた。 「あった!!」 明らかにほかの床板とは違う色の木材が使われた床の節目には、イリアが手にする鍵の形と同じ形が彫られていた。 持っていた本を一旦横に置き、その床を恐る恐る外すようにしながら開けると、そこにあったのはかなり古い本が一冊とまだ新しい本が一冊、計二冊の本がそこにあった。
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