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その背に跨って合図を出せば、広がる大空の世界に飛び込んでいく。
太陽の輝く光が雲をより白く誇張させ、羽ばたく鳥たちと共に大空を泳ぐ。
初めて泳ぐ空というものに、興奮を隠せないヴァイルが楽しそうに鳴き声を上げた。どこまでも続くこの世界にその声は遠くまで響き渡る。
遠ざかっていく王都を見ながら、離すものかとでもいうようにがっちりと掴むヒューリの腕から熱が伝わってくる。
「王子に挨拶を済ませてないのに。急にいなくなったら迷惑じゃないかな……」
「あいつに興味を示すのか?」
「え?」
「夢中になって俺の事なんか考えてもいなかっただろ?」
拗ねる子供のように目を合わせないヒューリに、イリアはそっと彼の頬に手を伸ばす。
「ヒューリ?」
「なんだ?」
「その……妬いてる?」
「……そう、言うのかもしれないな。ずっと相手にしてくれなくて、寂しくなっていた」
ヒューリの耳が徐々に赤く染まっていくのを見つめて、おかしくなって吹いてしまうとヴァイルも楽しくなったのか、急降下と急上昇を繰り返す。
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