12.始まりはいつもここから。

5/12
前へ
/192ページ
次へ
その背に跨って合図を出せば、広がる大空の世界に飛び込んでいく。 太陽の輝く光が雲をより白く誇張させ、羽ばたく鳥たちと共に大空を泳ぐ。 初めて泳ぐ空というものに、興奮を隠せないヴァイルが楽しそうに鳴き声を上げた。どこまでも続くこの世界にその声は遠くまで響き渡る。 遠ざかっていく王都を見ながら、離すものかとでもいうようにがっちりと掴むヒューリの腕から熱が伝わってくる。 「王子に挨拶を済ませてないのに。急にいなくなったら迷惑じゃないかな……」 「あいつに興味を示すのか?」 「え?」 「夢中になって俺の事なんか考えてもいなかっただろ?」 拗ねる子供のように目を合わせないヒューリに、イリアはそっと彼の頬に手を伸ばす。 「ヒューリ?」 「なんだ?」 「その……妬いてる?」 「……そう、言うのかもしれないな。ずっと相手にしてくれなくて、寂しくなっていた」 ヒューリの耳が徐々に赤く染まっていくのを見つめて、おかしくなって吹いてしまうとヴァイルも楽しくなったのか、急降下と急上昇を繰り返す。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

193人が本棚に入れています
本棚に追加