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それを解く鍵はここに全て揃っている。時間を掛けて辿り着いた答えを元に、この地へ降り立ったのだ。
イリアはヒューリの手をぎゅっと握り返すと、それを合図にして声を揃えて新しい幕を開幕させる。
「「アバルト・ジ・ディドロフ」」
揃った声が光の柱を揺らすと共に、ネグルヴァルトの木々達が意志を持って左右に揺れる。
光の柱が崩れるように光の礫を空気中に漂わせると、木々はその礫を飲み込むように吸収し……遂に死の森と呼ばれる森が、何ら変哲もない森へと姿を変えた。
この森に長年存在し続けた魔力が解放されるように緑が息吹く。
「長い長い道のりだったなあ」
ずっと答えを探し求め見つからなくとも楽しさが増すばかりの毎日が、ここで一つの終止符を打った。
清々しい気持ちとこれから先に待っている未来が楽しみでしょうがなくなった。
初めて浴びる太陽の光を全身を震わせる木々や草木が、嬉しそうに靡く。
「お父様も娘がここまでやり遂げるなんて思ってもなかっただろうな……」
「俺は、そんなことはないと思う」
「どうして?」
「あの本をイリアに託したんだ、信じてたに違いないさ」
繋がれた手の平からヒューリの想いと熱が流れてきて、急に目頭が熱くなった。
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