2.オタク令嬢はドラゴンと出会う。

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衝撃を受け耐えていた一本の木が音を立てたかと思えば、もうダメだと言わんばかりに地面へと倒れていくと、木々の隙間が出来たその空間に月明かりが集中して降り注ぐ。 「……!」 その月明かりに照らし出されたのは、夜空を映し出す海のような深い青の鱗だった。 鱗の煌めきは月明かりさえも反射させ、その輝きを周囲に放っていた。 そして全てを見透かすような真っ直ぐなイエローサファイアの瞳に、イリアが映り込む。 「ドラゴン……なの?」 その瞳に問いかけるようにイリアは呟くと、しなやかで大きなその体に生える翼を広げて見せた。 有り得ない光景に夢かと勘違いしたイリアは、頬を力強く抓ったがじんじんと痛みが広がるその感覚に、現実だと確信した。 ーーいたんだ……ドラゴンはこの世界に本当にいたんだ……!! 鞄の中から昼間見つけた書物を取り出してドラゴンが描かれたその頁と見比べて見ても、目の前にいるのはドラゴンそのものだった。 恐怖心は何処へやら。再び興奮がイリアを包み込み始めたが、そんなイリアにドラゴンが再び唸り声を上げた。 ーー興奮している場合じゃないわ。冷静に状況を判断しなきゃ。 鞄の中に荷物をしまって、とりあえず荷物を地面に置いた。 ナイフをむき出しにしていれば敵意が芽生えてしまうかもしれないと、自分は何もできない状態を示したかったのだ。
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