2.オタク令嬢はドラゴンと出会う。

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「私はあなたを傷つけるようなことはしない。だから、警戒しないでほしいの」 人間の言葉が通じるかは定かではなかったが、イリアはドラゴンの瞳をじっと見つめたままそう伝えると、理解したかのようにドラゴンは首を一つ縦に振った。 「もしかして、人間の言葉が理解出来るの……?」 「キュー」 甲高いその声で反応を示すドラゴンに、イリアは驚きを隠せず目を丸くした。 だが、ドラゴンは真っ直ぐにイリアを見つめて、信じろと訴えかけてきた。 「分かったわ。この出来事は未知の領域だけど、信じなければ何も出来なくなるものね」 力強く頷いて見せると、ドラゴンは納得したかのように目を伏せた。 ゆっくりと開いていた翼を折りたたむその姿に、イリアは何かを発見する。 「あなた、怪我して……!」 ここに落ちた時の衝撃で出来たであろう、翼に出来た傷はそこまで大きくはないが、少量ながらも出血している。 慌てて鞄の中からこの森の植物から作った薬を取り出して、ドラゴンに見せるように持ち上げた。 「怪我の処置をしたいの。あなたの元へ近づいても平気?」 「キュー」 鞄を肩に担ぎ了承を得たイリアは、何も迷うことなくドラゴンの元へと近づいた。 近づけば近づくほどその体の大きさに圧倒されるが、不思議と恐怖心はどこにもなかった。 「翼をこっちに出せる?」 近づいたはいいものの、何か台がないと処置ができないことに気づいたイリアだったが、ドラゴンに協力を仰ぐと痛々しい傷を見せてくれた。 「傷はそこまで深くないから安心して。この森の薬の効きはかなり評判いいのよ。……まあ、この森の植物で作ってるなんて知ったら、みんな使わなくなるんだろうけどね」 独り言ちるイリアだったが、ドラゴンに優しい目で見つめられているのに気づきそっと笑顔を向けた。 「あなたはそんな子じゃないのね」 大きな翼に薬を塗りながら処置を進めつつ、他の場所に傷がないかを確認していると、ドラゴンが一つ鳴いた。
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