1.オタク令嬢はめげない。

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普段なら朝起きてのんびり眺める新聞も読めるはずもなく、表になった一面に書かれた『魔女の仕業か?興奮状態から瀕死状態に陥る者続出』という見出しを眺めることしか出来なかった。 ーー出迎えって……今日は誰と会う予定だったんだっけ? されるがままの状態で昨日の晩食時の会話を思い出そうとするが、どうやら話を聞いているふりだけして他の事を考えていたらしい。 まったく思い出せないことが分かり、即座に考えるのをやめた。 「今日会う殿方は、一体どのようなお方かしら」 独り言のように呟いたイリアだったが、これはイリアの一つの戦法だ。 殿方を想う貴族令嬢、周りは自然とそう思うはずだ。それにまんまと引っかかった侍女の一人が、結い上げた髪を整えながら口角を上げた。 「デイバート公爵家の跡取り、ユイン様……噂ではとても柔和な方とお聞きしておりますよ」 「まあ……素敵な方なのね」 目を伏せてその殿方を思い浮かべるような仕草をしつつ、イリアは頭の中では情報を整理していた。 ーーなるほど、今日は縁談する日なのね。デイバート家……確か鉱石関連の物資輸送で名前が通っていたはず。港町に商会をいくつか兼ね揃えていたわよね?なら、今回は話が少しは弾むかしら……! 支度が整ったと侍女が声をかけ、即座に考えるのをやめて鏡に映る自分の姿を見てイリアは少々苦笑いを浮かべた。
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