1.オタク令嬢はめげない。

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その輝きは留まることなく、イリアの体を駆け巡り遂には飛び出してしまった。 「ユイン様!それは勿体なく思います!折角自由に使える資源をお金に替えて終わりというのは、その地域の発展に繋がりません!」 あまりにもいきなりな発言にユインは驚きを隠せずイリアを見つめるが、その視線さえも切り捨てるような勢いでイリアは前のめりになりながら語り出す。 「鉄鉱石は高温で熱すると含有する酸素を取り除くことが出来るという研究結果が出ているんです。熱した後に再び不純物を取り除いていくと鉄鋼が出来上がります、すごいですよね!熱して不純物を取り除くと元あった形とは異なったものが作り出されていくんです!そこから生み出された物で、また新たな物を生み出していく……なんて素敵なことだと思いませんか?!」 紅茶の置かれたローテブルを叩いて、興奮が収まらない状態のままユインに熱い視線を向けるが、そこにはもう穏やかに会話できそうなユインの顔はなかった。 しまったと思っても、もう遅いこと。紅茶の熱い湯気はまだまだ揺れているというのに、ユインは手短にきっぱりとこう言った。 「君は知識のある人のようだけど……何かに取り憑かれてはいないかい?すまないが、この縁談は無かったことにしてくれ」 イリアの顔を見ることなく、立ち上がって案内もなしに屋敷の玄関へと向かって歩いていくユインの姿を、イリアはただ黙って見送ることしか出来なかった。 開け放たれた扉の奥で血相を変えてユインに近づく伯母の姿に逃げるようにして、イリアは応接間を後にしたのだった。
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