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それから今日まで、様々な物が透明になった。だから、僕から見える景色はどんどん奇妙なものになっていった。
何も持っていない右手を耳に当てて、ぶつぶつ呟くOL。何も入っていないジョッキをおいしそうに口に当てるサラリーマン。公園では、小学生が何も持っていないのに、両拳を腰の辺りで握り、ぴょんぴょん飛び跳ねていた。
僕は眼科に行くべきか迷った。だが、視界がぼやけている訳でも、遠くの物が見えない訳でもない。ただいくつかの物だけ、見えないのだ。透明になった物以外は全てはっきりと見えている。この症状を眼科に行ってどうやって説明しようか。きっと、視力の問題ではないだろう。最悪、僕は精神科に回されるかも知れないと思った。
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