1.フシギな少年

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ーー そうじの時間を終えて昼休みが始まると、矢一と波美と日奈は机をくっつけた。波美は教室にある、先生が用意してくれているトランプを持ってきた。 「おまえは参加しないのか?」 波美がシャッフルしている間に、矢一は静かに本を読んでいる詩道に声をかける。 詩道は小さくうなずいた。 「ねぇ詩道くん。何の本を読んでいるの?」 日奈が詩道に話しかける。 「これは学校の怪談話がいろいろ入ってる本だよ」 「怖い話なのね。おもしろい?」 「うん。本に興味ある?」 楽しそうに話を続ける2人をぼうぜんと見ていた矢一は、面白くなさそうにムスッと眉を寄せた。 「なんだよ、楽しそうに話しちゃってさ」 「矢一ったら詩道にヤキモチ?」 「ちげーし! 2人でトランプやっても面白くねぇだろ」 「それはそうかも」 詩道は日奈に向けて本の表紙を見せているところだった。 「『学校の怪談話集』? ずっとそれを読んでたわけ?」 「違うよ。今日はこれだけど、昨日は冒険ものを読んでた」 日奈に続いて波美まで詩道との会話を始めてしまった。矢一は仕方なくトランプをケースに仕舞うと、3人の輪の中に入ることにした。
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