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「本なんておもしろいか?」
「うん。君たちは本を読まないの?」
「あたしは漫画なら読むけど。小説は文字ばっかりで読まないかな」
「私は物語は好きだから、ドラマはよく見るわ」
「俺は読まない!」
矢一がいばるように言い切ると、詩道は「そっか」とだけ言った。
素っ気ない返事にムッとした矢一は、詩道に掴みかかろうとして日奈に止められた。
「落ち着いて矢一くん。ねぇ詩道くん。本はドラマよりもおもしろいもの?」
「おれにとってはそうだね。異世界とか幽霊とか、実際にはないものが本の中には存在するから」
それを聞いた日奈は、納得したようにうなずいている。
「いつも違う本を読んでるよね? 家の本?」
自分に興味なんて持たれていないと思っていた詩道は、日奈が意外にも自分を見ていたことに驚いた。詩道は笑みをくずさないままに、首を横に振った。
「図書室の本だよ」
「学校の図書室か?」
「そうだよ」
「あそこ、そんなに本があるイメージねぇけど」
矢一が首をかしげると、波美と日奈もうなずいた。それを見た詩道は、イタズラを思いついたような笑みを浮かべた。
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