5.同棲生活? 同居生活!

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 卑怯は承知の上だ。  そうまでしても、柳田さんをあのアパートに帰したくない。  柳田さんが尊敬してくれている俺のプレゼンが功を奏したのか、彼女は明らかに迷い出した。  ここでもう一押しだ!   「それに、だ。最近ではこう言った男女の同居は珍しいことでもないようだ」 「そう……なんですか?」  明らかに怪訝な表情で俺を見る。  俺は力強く頷いた。 「昨今、消費税を始めとする税金の増加、物価や学費の上昇、就職率の低下、入社後まもなくの退職率などから、学生を始めとする若者の貧困化が問題視されている中、高年齢化の影響によって増えた空き家をシェアハウスとして活用するのは、若者の金銭的事情やそれに伴う婚姻率、更には出生率にまで良い影響をもたらしているそうだ」 「……はぁ」 「『同居もの』として小説や漫画、ドラマや映画の題材となるまでに、社会現象となっていることを鑑みても、俺と柳田さんのルームシェアはさほど行き過ぎた提案ではない」 「そうでしょうか!? 確かに『同居もの』なる小説やドラマが人気であることは知っていますが、それはあくまでも――」 「――めぞん〇刻という漫画は知っている?」 「はい、何となくは」 「あれは下宿、という設定だったが、ルームシェアとなんら変わりはない。同じ建物に男女が暮らしている。トイレも風呂も共有。違うのは、管理人が食事や建物内の共有部分の清掃などを業務として行っていることだろう。あの漫画が流行った当時、実際に貧乏学生と呼ばれる親元を離れて高校や大学に通う学生は寮や下宿が当たり前だった。それを、異性と暮らしていると下品な色眼鏡で見る大人はいなかっただろう。その理由が、管理人の存在だというのならば、俺たちの場合は俺が管理人で柳田さんが下宿人とでも思ってくれたらいい。俺はきみを下宿させる対価として金銭ではなく労力をもらい受けるだけだ」
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