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「そりゃ、楽しいだろ。好きな女と結婚出来て、めいっぱい抱いて、未来を語り合うんだ」
「未来……」
「出るか」と言って、彪が立ち上がり、私の手を引いた。
互いの身体を拭いて、部屋着を着せ合う。
私には初めてのことばかりで戸惑うが、彪は常時楽しそうだ。
昨夜食べ損ねたオードブルやケーキを並べて、食べた。
「な、椿?」
「はい」
しんなりしたエビフライを咀嚼しながら、彼を見た。
「今までは目先の目標っていうか、目的しか考えていなかったと思うけどさ――」
フッと微笑んだ彼に、今更ながらドキッとする。
「――これからはもっと未来のことも考えていこう」
「未来?」
「そう。椿にとってこの十年くらいは、借金返済が全てだったろ?」
うん、と頷く。
「けどさ、もうすぐ完済で、年明けからはフードロス企画も本運用が始まる」
うん、と頷く。
「結婚もした」
うん、と頷く。
「だから、今まで考えられなかった色んな事、考えよう。で、俺と話し合おう」
実はどこか、現実的じゃなかった。
彪のお祖母様に会っても、婚姻届を書いても、提出しても、夢のような感覚。
いつか醒めてしまうんじゃないかと不安が拭えない、幸せな夢。
だって、憧れていた、尊敬していた是枝部長が私を好きだなんて、信じられる!?
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