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「椿。……俺たちは死ぬまで一緒だ。椿が言ったんだぞ? 俺を孤独死なんかさせないって。それは、俗に言う『死が二人を別つまで』ってやつだろ?」
「死ぬまで一緒……」
彪が立ち上がり、私の横に膝をつく。
そして、私の頭を撫でた。
「出会ってから今日まで、結構な勢いできたもんな。実感がなかったか?」
小さな子供をあやすように、よしよしと頭を撫でられる。
「だから、難しい表情してるのか?」
しょっぱい。
何も食べていないのに、口の中がしょっぱい。
「倫太朗ほどじゃないかもしれないけど、俺、お前のことわかってきたよ」
しょっぱいのは、涙だ。
私が流した、涙。
「ずっと一人で頑張ってきたから、自分以外の誰かのペースに巻き込まれると、ついて行けないんだよな?」
彪が私の眼鏡を外す。
途端に視界が滲み、何も見えなくなる。
「不安があるなら言ってくれ。でなきゃ、お前と結婚出来て舞い上がってんの俺ひとりで、恥ずかしいだろ?」
どうして彪は、こんなに優しいの……。
ずっと、ひとりで生きていくのだと思っていた。
それを寂しいと思う間もなかった。
借金を返しても、自分がどこの誰かはわからないし、お祖母ちゃんの言葉は消えない。忘れられない。
ひとりでいいと、思ってた。
彪に会うまでは――。
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