18.信じる気持ち

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 そうしていると、触れられていないと寂しく思えてくる。  洗脳に近い心理状態かもしれない。  だから、だ。  そうでなければ、頷かなかった。 「このまま、シていい?」  後で、冷静になって考えてみたら、気づけた。  彪は、始める前から気づいていたことに。  だって、最後の一つを使った時に、それが最後だとわかったはずだ。  なのに、彪は私をその気にさせた。 「これで最後だから」とまで言って。  身体中を撫でられ、舐められ、泣かされ、喘がされた。  きっと、三日間で一番念入りに蕩かされた。  それなのに、イカせてもらえなくて、私の身体は疼きに疼き、ある種の極限状態にあった。  だから、だ。 「挿れて……」  彪がどんな表情をしていたかはわからない。  泣き過ぎて、何も見えなくなっていたから。 「ここに――」と言いながら、彪が私の臍の辺りを掌で撫でる。  それだけでも、息が上がるほど身体中敏感になっていた。 「――俺の……出していい?」  何度も言う。  私の精神状態は正常ではなかった。  なぜなら、『挿れて』と言ったのに、『出して』いいかと聞かれたことの意味がわからなかったから。 「早くぅ……」 「椿、駆け引きってのはこうするんだよ」  耳元で囁かれたが、ほぼ同時に貫かれて、意味までは分からなかった。 「ああーーーっ!!」  挿入と同時に達してしまい、揺さぶられる度に首を振るだけで精一杯の私は、仕事始めに遅刻ギリギリで駆け込むなどという失態とともに、新年をスタートさせた。
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