18.信じる気持ち

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 私は、碧い着物にそっと触れた。 「この振袖を着てお嫁に行く椿ちゃんを見たかったって、泣いてたよ」  知らなかった。  お祖母ちゃんが、私の為に着物を買ってくれていたなんて。  お祖母ちゃんが、私が結婚する日を楽しみにしてくれていたなんて。 「広げてみてもいいか」  彪が、着物に触れる私の手を握った。  私は着物から手を離し、彪が重なり合う布地を広げた。そして、呟く。 「椿の瞳の色だな」 「え……?」 「ん? だろ?」  私の瞳……こんな色なの……?  着物は、全体的には青地で赤や桃色の牡丹や椿の花が描かれており、袖の袂と裾に向かって緑にグラデーションされている。  ただ、単純な青や緑とは違い、青とも緑とも見える、言うなれば南国の海のような色。  私はこの瞳の色が嫌いだった。  子供の頃は他の子たちよりほんの少しだけ明るいブラウンだった。  それが、成長するにつれて青味がかってきた。  それを隠したくて、眼鏡をするようになった。ほんの少しだけ色の入ったレンズで、瞳を隠した。  その頃から、自分の瞳をマジマジとは見ていない。 「お金に余裕がない中で、瞳と同じ色の着物を買って着せようだなんて、するか? 愛してもいない孫のために」  それは、私がお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに愛されていたってこと……? 『気味の悪いその目で見るな』 『孫でも何でもない他人のために、どうして私たちが犠牲にならなきゃいけないんだ』  そう言ったのに?
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