18.信じる気持ち

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「なぁ、椿」  呼ばれて、ゆっくりと首を回した。  彪が、穏やかに微笑む。 「本当のところ、椿と祖父ちゃん祖母ちゃんとの血縁関係についてはわからない。だから、最初は亡くなる前に祖母ちゃんが言ったみたいに、椿を疎ましく思っていたかもしれない。でも、一緒に暮らしていくうちに、変わったかもしれない」 「かわ……った?」  彪が、両手で私の眼鏡を外す。  眼鏡をテーブルに置き、真っ直ぐに私の瞳を覗き込む。  私は、じっとしていた。 「そう。最初は気味が悪いと思っていたこの瞳を、綺麗だと思うようになったかもしれない」  初めて会った時、お祖父ちゃんは私に微笑んでくれたけれど、お祖母ちゃんは無表情だった。  だから、お祖母ちゃんを怖いと思った。  一緒に暮らして、家事全般や礼儀を指導された。  倫太朗には優しく微笑むのに、なぜ私にはそうしてもらえないんだろうと思った。  けれど、いくら孫でも両親が亡くなるまで会ったこともなくて、いきなり孫だ、同居だなんて言われても戸惑うのはお互い様だと飲み込んだ。  一年も過ぎた頃には、お祖母ちゃんの厳しさにも慣れたし、それなりに優しい言葉をかけてもらえるようにもなったから、それで良かった。  お祖父ちゃんに『祖母ちゃんが厳しいのは、遺された椿が困らないようにと思ってだからな』と言われたこともあった。  忘れかけていた、思い出そうとしなかった、祖父母と暮らした日々が、脳裏に浮かぶ。
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