6256人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、ね。あ! けど、彪さんに泣かされたら連絡して? 麗さんと一緒に殴りに来るから」
「なんでれ――京谷まで」
「えー。だって、俺と麗さんが結婚したら、椿ちゃんと彪さんの義理の妹になるんだよ?」
「は?」
「結婚するの!?」
「うん。口説いてるとこ。ってわけで、俺は東京に行くね」と言うと、倫太朗はスタスタと玄関に向かう。
私と彪は驚きながらも後を追う。
「あ! 俺と麗さんからの結婚祝いは後で届くから。じゃ、ね!」
早口でそう言って、倫太朗はさっさと出て行ってしまった。
「忙しないな……」
彪が鍵をかけながら呟いた。
本当に。
お陰で、涙も引っ込んだ。
リビングに戻った私たちの前には、着物。
「さっきはああ言ったけどさ――」と、彪は広げた袖を戻しながら言った。
「――本当の父親を知りたければ、協力するぞ?」
「え?」
「DNA検査は無理でも、椿が生まれた時のこととか、調べようと思えばわかると思う。母親の実家を突き止めて話を聞くとか、当時のことを知っていそうな友人を探すとか。真実と言えるかはわからないけど、かなり近いところまでわかるんじゃないか?」
確かに、今まで探そうとも思わなかっただけで、このご時世、何かしらはわかると思う。
ただ、知りたいか、なのだと思う。
私は彪の隣に座った。
最初のコメントを投稿しよう!