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「ふぅ。お腹いっぱい」
だろうな、と思った。
テーブルの上の皿とジョッキを見れば、納得だ。
彪さんから電話があった時にはもう、椿ちゃんはいなかっただろうし、いくらかは皿も片付けられたと思う。
お姉さんは目を伏せ、眠っているのではと心配になるくらいじっとしていた。
それから、パッと顔を上げ、肩を上下させて息を吐いた。
「さ! 帰ろ」
外していたジャケットのボタンを閉め。襟を伸ばして背筋を伸ばす。
すると、胸が強調された。
ゴクッと喉が鳴る。
年上の美人で、おっぱいが大きい。
長い黒髪は毛先が巻いてあって、化粧は少しきつめ。
「お姉さんのリップ、良い色だね」と、無遠慮に唇を見つめて言った。
お姉さんが嬉しそうに頬を緩める。
「ありがとう。気に入ってるの」
「もしかして、朱月堂?」
自社製品だが、揚げ物やらラーメンやらを食べた後では、艶が変わって断定できない。
「あら、詳しいのね? そ。夏モデルなんだけどね? 気に入ってるの」
お姉さんの色は、確か冬モデルは限定販売にしたはず。直営店のみ取り扱いの上、各店数量限定なのだ。ついでに、夏モデルより高い。
たいして愛着があるわけではないが、やはり自社製品を褒められるのは嬉しい。
「お姉さん、家はどこ?」
「出張で来てるから、ホテルなの」
「一緒に行っていい?」
「ダメ。セミダブルだし、壁が薄いから」
話が早い。
「じゃ、俺のマンションに来てよ。二十三階だよ? 一緒に夜景を見よう」
「二十三階も夜景も興味ないけど、気持ちいいセックスしてくれるなら行く」
そう言って立ち上がると、少し不安定な足取りで俺の隣にやって来る。
膝から倒れ込むように座ると、おっぱいを強調するように前のめりになって顔を寄せた。
キスされると思った。
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