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今まで付き合ってきた、俺を朱月堂の御曹司と知った上で目を輝かせる女たちとはずいぶん違う。
「うん。いいとこのお坊ちゃんだよ。お金に困るどころか使い切れなくて困ってる」
「そう」
「結婚迫る?」
「……大事にしてね」
「お姉さんを?」
「お金を。あと、お金に困らずに暮らせる境遇を」
「お姉さん?」
泣いているのかと思った。
俯いたまま顔を上げないし、自分の肩を抱くように身体を丸めていたから。
けれど、すぐに彼女は顔を上げた。
泣いてはいなかった。
「また、おばさん臭いこと言っちゃったね」
「そんなことないよ」
「酔うと説教染みちゃうの、年ね」
「そんなことないよ」
「あーあ。雰囲気ぶち壊し。やめよっか」と言いながら、お姉さんが身体を起こす。
俺の胸を手で押し離そうとするが、許さない。
「やめないよ」
「え?」
「抱いていい?」
「けど――」
「――抱きたい。抱かせて」
彼女の膝を両足で囲い、逃げられないように腰を抱く。
ちょうど目の前に迫って来た胸に顔を寄せた。
「物好きね」
谷間に顔を押し付けながら視線を上げると、お姉さんが笑ってた。
「ベッド行こ」
真っ裸のお姉さんの手を引いて、洗面所の向いのドアを開ける。
十六畳だか二十畳だかの部屋には、真ん中にキングサイズのベッドがあるだけ。
「ここで一人で寝てるの?」
「うん」
お姉さんをベッドに座らせ、俺は自分のシャツを脱いだ。ベルトを外し、スラックスを脱ぐ。
ボクサーパンツすら痛いほど大きく勃ち上がっていたが、脱がずに我慢した。
「寂しくない?」
「……寂しい?」
「私は寂しかったかな。大きすぎるベッドで一人は」
「過去形?」
「結婚してた時の話」
「そう」
「また、シラケる話しちゃったね」
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