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「ううん。今日は寂しくないね。二人だから」
「……そうね」
俺はこの部屋に女は入れない。入れたことがない。
なのに、お姉さんは俺のベッドにいる。
彪さんの同僚で、元カノで、椿ちゃんの仕事仲間。
身元がしっかりしているから?
違う。
お姉さんは俺が誰かを知らないから。
仕事で東京から来ていると言っていたし、お互いに名前すら知らないんだから、ワンナイト確定。
だから、入れた?
違う。
同じ匂いがしたから。
自分のことを哀れだと言った。
『バツ二で、欲求不満で、元カレがラブラブエッチするのを妬むような哀れな女』
慰めたかった?
違う。
慰められたかった。
『二十三階も夜景も興味ないけど、気持ちいいセックスしてくれるなら行く』
それは、俺だけを見てくれるってことだ。
マンションの一階でも、真昼間でも、気持ちいいセックスをする俺を受け入れてくれるってことだと思う。
ま、気持ちいいセックスをするなら、俺じゃなくてもいいってことでもあるけど。
お互い様だ。
ようやく唇を重ねると、歯磨き粉の味がした。
俺は彼女の腰を抱き、彼女は俺の首に腕を絡める。
俺は彼女の胸を揉み、彼女は俺のモノを扱く。
「ね、ヤバいから触んないで」
唇を触れ合わせたまま目を開けると、お姉さんも俺を見ていた。
そのまま、見つめ合って舌を絡める。
ヤバい。
気持ちいい。
めちゃくちゃ興奮する。
今までの女たち同様、主導権を握られているのに、嫌じゃない。
「ゴムは?」
まつ毛が触れる距離で、キスをしながら聞かれた。
「ズボンのポケット」
そう言うと、お姉さんがクスッと笑った。
実際はキスをしていたから、目元を見てそう思っただけ。
「やっぱり、慣れてるのね」
返事の代わりに、お姉さんの舌に吸い付いた。
「んっ……」
「すぐ出ちゃいそうだから、もっかいしてい?」
「スル気失せるかもしれないから、そういうこと言わないの」
「頑張るから」
「違う。あなたよ」
「……?」
今度はお姉さんが俺の舌を吸う。
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