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「一度で十分、て思うかもしれないじゃない」
「思わない自信があるよ」
「変な自信」
ようやく唇を離した時、寂しと思った。
互いの唾液で光る互いの唇を見つめたまま、ぎこちなく身体を離す。
俺はベッドの下に脱ぎ捨てたスラックスのポケットから、コンドームを取り出した。
「綺麗ね」
振り返ると、お姉さんが窓の外を見ていた。
夜景に興味はないなんて言っていたのに。
コンドームを着けるこの時間が気まずくならないように、だろうか。
「お姉さんの方が綺麗だよ」
我ながら恥ずかしくなるような歯が浮く台詞だが、お姉さんは振り返って笑った。
「ありがとう」
ヤバいと思った。
ハマる気がした。
こんなにひどく喉が渇く感覚は初めてだ。
セックスは好きだ。
好みじゃない女でもデキる。
けれど、こんなに触れたくて堪らない衝動は、知らない。
「お姉さん、名前は?」
俺の問いに、彼女は少し驚き、それから、フッと笑った。
「ナイショ」
「俺は――」
名前を、呼び合いたいと思った。
だって、このまま抱き合って朝になったら、他人だ。
いや、今も他人だけれど。
とにかく、何か知っておきたい。
そうでなければ、この夜がなかったことになってしまう。
けれど、お姉さんは名乗ろうとした俺の唇に、自分のそれを重ねた。
「――また、シたいって思えたらね?」
お姉さんの腰を抱き、俺の腰に跨らせる。
手を添えなくてもガチガチで、蜜口を探り当てると、すんなり飲み込まれた。
が、指を入れた時も思ったが、狭い。
「大丈夫?」
お姉さんが、はあっと艶めかしく息を吐く。
「久し振りだから」
「痛い?」
「少し」
「動かない方がいい?」
「動かずにいられる?」
「頑張る」
ホントは突き上げたい。
「ありがとう」と言って、お姉さんがおでこにチュッとキスをくれた。
俺は目の前の乳房に顔を擦りつけた。
「幸せだなぁ」
そう呟いた自分に、自分が一番驚いた。
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