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「かわい……」
私のおっぱいを抱き枕にして眠る彼のおでこにキスをする。
さっきまでの猛々しい雄の表情はどこへやら、学生でも通りそうな幼い寝顔。
まさか、未成年てことはないわよね……。
私は彼の腕を解き、同時に私の膣内からずるりと抜け出たカレの後始末をした。
服は洗面所に脱ぎ捨てたまま。
帰る前にシャワーを借りた。
久し振りに、気持ち良かった。
私は、見た目には股がユルそうだと思われがちだが、違う。
三十一年間で、私の身体に触れた男は五人。
因みに、三人目が彪で、五人目が今夜の彼。
四番目は最初の夫だが、まぁ、自分勝手なセックスをするおっさんだった。
二番目の夫とはセックスはしなかったから、今夜が約二年振り。
これまでの私にとって、彪とのセックスが一番だった。
燃えるような愛情がなくても、優しく、丁寧な愛撫と、激しい抽挿は最高だった。
それに、一応、恋人だったから。
彪にも、遊び慣れた女だと思われていたが、訂正しなかった。
私はそれなりに彪が好きだったし、彼の転勤までの半年間をいい思い出に出来たらと納得済みだったから。
けど、今夜で一番が入れ替わったわね。
名前も知らない年下の男の子に、翻弄され、甘やかされ、甘えられ、寂しさが消えた。
たった一晩の関係なのにね……。
身支度を整え、せめてお別れのメモを残そうと、リビングに入った。
ここにも物がない。
無駄に大きなテレビとソファとテーブル、壁際に本棚があるだけ。
本来であればダイニングテーブルが置かれるであろう場所は、寒々としている。
この部屋で一人暮らし……?
自分の部屋でもないのに、寂しくなる。
本棚には経済やファッション、ポージングの本や雑誌が並んでいた。
おバカなお坊ちゃんではないのね。
テーブルの上にも、難しそうな経営に関する本が置かれている。
キョロッと見回したが、紙とペンは見当たらず、私は自分のバッグから手帳を取り出し、メモページを一枚破った。
二番目の夫からのプレゼントであるボールペンでお礼を書き、部屋を出た。
『素敵な夜をありがとう』
ワンナイトにしては、綺麗な別れでしょ。
酔っていて気づかなかったけれど、コンシェルジュ付きのマンションだった。結婚していた時は、私もこんなマンションに住んでいたのだけれど、今となっては現実だったのかと疑うほど味気ない生活だった。
お金に困らない結婚に憧れて、こだわった私が悪い。
所詮、ビンボー人の夢だったってことね。
私はタイミングよく登場したタクシーに乗り込み、駅前のビジネスホテルの名前を告げた。
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