6260人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
毎朝、カーテンをつけなければと思う。
住み始めて三年になるのに。
朝陽に照らされて目を覚まし、窓に背を向けて二度寝。
そこで、気づいた。
お姉さん――!
ガバッと身体を起こし、いつもと変わりない、何もない部屋を見回す。
ボクサーパンツを穿き、洗面所を覗くが、昨夜脱ぎ散らかしたお姉さんの服は綺麗になくなっていた。
リビングに入り、すぐにテーブルの上のメモに気づく。
『素敵な夜をありがとう』
名前も聞いていない。
一度じゃ足りないなんて言っておきながら、寝落ちした。
サイアクだ――――。
テーブルの上の本に目を落とし、彼女の言葉を思い出す。
『お金に困らずに暮らせる境遇を大事にして』
ずっと、親に顧みられずに生きてきた。
それなのに、当然のように、朱月堂で働くように言われ、他の選択肢を奪われた。
それでも、いつか、自分だけの居場所を見つけたくて、何かしておきたくて、思いつく勉強をしている。
バカなお坊ちゃんだって思われたままは……嫌だな。
身体が熱い。
昨夜から、お姉さんの熱に浮かされたまま。
俺は急いで身支度を整え、部屋を飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!