いつか勝利の美酒を

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 地球人を支配しようと企む悪の組織――ブラックフィアー。その組織のアジト内にある、バーのカウンター席で2人の男女が横並びで座っていた。 「クレーア様、昨日のこと覚えてます?」  右側に座っている男――アーマイゼは(から)になった自分のグラスを見つめながら、隣の上司に尋ねた。彼は光沢のあるワインレッドのスーツで全身を包んでおり、スーツと同じ色のハーフマスクで目元を隠している。蟻が擬人化したような姿の怪人で、頭には触覚が2本、背中には垂れ下がった薄い羽が付いている。 「なに、覚えているさ」  クレーアと呼ばれた女が、勇ましい声色で答えた。黒を基調とした身なりの怪人で、背中には黒い羽が幾重(いくえ)にも重なって成された、大きな翼。銀色のショートヘアから突き出た2つの黒いツノは、S字に曲がっている。ライダースーツのような全身スーツで身を(まと)った体は、メリハリの利いたグラマラスなラインを如実(にょじつ)に出していた。 「しかし、あれは失態ではない。好みのタイプだったから手を抜いたのだ」 「え、何の話です?」 「なんだ、昨日の戦いの事じゃないのか?」  昨日はクレーア率いる部下たちとともに、侵略中の街のヒーローたちと交戦した日。幹部であるクレーアはベテランヒーローを相手に、完膚なきまでに追い詰めていた。しかし、何故か唐突に彼女の動きが鈍くなり、あっという間にヒーローに逆転されて惨敗。  なす(すべ)が無く撤収する中、全身ボロボロになった彼女をアーマイゼがアジトまで運び込んだのだ。  クレーアが言っているのはその戦いの事だろうが、 "好みのタイプ" とか意味のわからない発言をされたので、彼女の頭が心配になった。
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