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「逆に気になるんですけど。続けてみてください」
「よかろう」
クレーアの紫色の唇が妖艶に動いた。彼女は白のハーフマスクをつけており、目の位置に空いた2つの穴から、黄金色の瞳を覗かせている。
「あの男、実にワタクシの好みであった」
彼女は目の前のカクテルグラスのプレートに触れながら、グラスの中を見つめていた。
「戦闘中、手が触れ合っただけで全身がビビッとしてな。あれは恋に落ちた感覚と似ている」
「それ感電ですよ。ビリビリしてるの見えたし」
「アヤツにも思いが通じたのだろう。すかさずワタクシに熱い抱擁をしたのだ。あの時の温もり、今でも鮮明に覚えている」
「完全に貴女を絞め殺そうとしてました。あの時のアイツの顔、今でも鮮明に覚えてます」
「さ、さらには……ワタクシのむ、むねを……」
キャッ。と両手で顔を覆い、もともと隠れている顔をさらに隠した。
普段の上司からは、あられも無い仕草。そんな彼女を、アーマイゼは白い目で見るしかなかった。
「みぞおちへの一撃をそんな風に解釈するヒト、中々いないですよ」
「おい、さっきから嫌味が過ぎないか?」
「嫌味じゃなくて事実です」
「なら貴様は、ワタクシの観察に夢中だったと……戦闘中によそ見をしていたという事だな? 仕置きの必要がありそうだ」
吊り上がったクレーアの目が動き、鋭い眼光が向けられた。
「貴様には失望したぞ」
「昨日のこと覚えてないみたいですね。こっちの話、しても良いですか?」
「マイペースか? それともワタクシをナメているのか?」
「違います。罰はきっちり受けるんで聞いてください」
アーマイゼは体を左側に向け、クレーアと向き合うよう座り直した。
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