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クロがシロに鋭い視線を送りながら、交渉内容の続きを話した。
「邪魔しないでよ、シロ。私は嘘だけは吐かないわ。魂を吸収するっていっても、あんたは痛くも痒くもないわ。安心して。気付いた時には私達と話した記憶はサッパリ消えて、来世を生きてるから。
まぁ、このまま生まれる選択をしても、私達との記憶は消えるけどね。」
クロが話している最中、ボンヤリと一筋の光が漆黒の闇を照らし始めた。シロは光が苦手なのか、手を額に翳して、眼を細めた。
「いよいよ時間が迫ってきたわね。今は一筋だけど、この光はどんどん広がって、闇を消すわ。闇が完全に消えたときがタイムリミットよ。
最後に一言だけ言わせて。貴方の人生はクロの言う通り、辛いことも苦しいこともたくさんあるわ。でもね・・幸せだと感じることも楽しいと思う日も確かにあるの。私も嘘は吐かないわ。
あとは、貴方の人生よ。貴方が決めなさい。」
シロは最後に私にそう言うと立ち上がり、
「クロ!あとはこの子が一人で考えることよ。私達は行くわよ!」
と有無を言わさない口調で言った。
「分かったわよ!」とシロに言い返すと、
「どちらに決めても心のなかで私を呼んで。結論を聞くから。じゃあね。」
淡々と私に告げたクロは一瞬で跡形もなく姿を消し、周りを見渡すとシロも消えていた。
まだ、光は一筋しか差していない。今までただ怖いだけだった暗闇の中が、何故か少し居心地よく感じた。闇が私の決断を待ってくれている・・。
そんな気がしたからだ。
私はその場に横になって、考え始めた。
クロの言ったこと、シロの言ったこと、私の人生、クロとの交渉、辛いこと、楽しいこと、今より確実に幸せな来世・・
私の中に様々な言葉や景色が浮かんでは消える・・。
そして、私はゆっくりと目を閉じた。
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