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シロという名の少女も私の前にゆっくりと座り、クロと呼ばれた少女は苛立たしげに、シロを睨み付けていた。
「クロの話は残念ながら嘘ではないわ。本当のこと・・。でもね、貴方の人生は辛くて苦しいことだけじゃない。楽しいこともたくさんあるの。
さっき、カッターナイフを手首にって、クロが言ったわね・・。たしかに貴方は辛い現実を終わらせたくて、手首を切ろうとする。
でも、切らなかったの!
何故だと思う?」
シロはニコッと笑みを浮かべて、私に問いかけた。
私は、瞳を涙で潤ませながら、
「分からない・・。」と呟いた。
シロは真剣な口調で、
「貴方には夢があったの。漫画家になるっていう夢。手首を切る寸前、貴方は思った。
手を傷つけたらもう絵が描けなくなる・・。
ここで死んだら絶対に夢は叶わない。
そう思ったら、涙が溢れて止まらなくなった。そして、思いとどまることが出来た。」
と話した。
クロが忌々しげに怒鳴った。
「相変わらずの偽善者ね、シロ!
あんたこそいいことしか言わないじゃない!」
シロはため息を吐いた。
「貴方が悪いことばかり言うから、いいことも伝えなくちゃと思っただけよ。まだこの子に伝えたいことがあるから黙っててちょうだい。私の話が終わってから、交渉に入って。」
(交渉?何のことだろう?)
私は交渉というよく分からない言葉が気になったが、シロが伝えたいことというのも気になった。
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