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そんな霊能部の大黒柱。つまり、構成員達を助けた人間は、20歳少し前の女子だった。
そんな彼女は、今日も今日とて、忙しない日々を送っているのだ。
「葉隠さぁん、面白そうな番組見つけました!!」
奥から声を上げるのは、一人の男。
名を、泉野瑞稀。彼も、葉隠に助けられた者の一人だった。
「面白そうな番組?」
葉隠は聞き返した。
「はい。何でも、心霊番組らしくて、出てる霊能力者、絶対にせもんですよ!」
泉野は熱く語った。
全く、夏だというのに、暑苦しい男だ。
だが、偽者というのもまた気になる。
泉野が偽者では無いか、と言えるのは、怪異に襲われた影響で、霊の気配や、姿を視る事が出来るようになってしまったからだ。
「何、見せて見せて。」
テレビの前に座り、番組を見る。
「親子らしく、娘さんの方に霊が憑いているみたいです。あ、丁度今…」
「黙って。」
テレビの中の男の霊能力者はこう言った。
『嗚呼、これは、これは、女性の霊です、非常に強力な女性の霊が憑いています。』
嗚呼、駄目だ此奴は。
「ッチ、こんな野郎が居るからだ、霊能力者の信憑性が低くなるのは…!」
「お、落ち着いて下さい、口が悪くなってますよ。」
事務机から聞こえる声は、美濃山皐月。
彼女もこの部のメンバーの一人だ。
「ですが、矢張り偽者でしたか。」
「嗚呼、女性の霊なんかでは無い…」
非常に強力。それは合っているようだが、それだけでは何ともならん。
「ここでは正体が分からん。この番組は…生放送だな。番号は…」
「…?乗り込みに行くんですか?」
「否、そんな事しない。取り敢えず電話だ。」
テレビの前から去り、電話機のあるところまで行く。
「………」
プルルルル
よし、繋がった。
ガチャリと音がして、声が聞こえた。
「はい、×〇△です。申し訳御座いませんが、取り込み中でして」
「お母さんですね。今放送を見てますけど、その霊能力者は偽者です。娘さんに憑いているのは女の霊なんかじゃあない。」
現在、あちらでも私の声が流れているんだろう。偽者霊能力者と憑かれている娘さんは唖然としていた。
一方、テレビ陣達は面白い展開になったと感じているようだ。
否、笑えるような事態じゃあない!
現場の皆に私の声が聞こえるように指示をして、続ける。
「娘さん、貴方に憑いているのは女性の霊じゃない。水子の霊だ。」
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