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現場に行くと、忠告も空しく、報道陣が群がっていた。
全く、どうなっても知らないぞ。
報道陣に近づき、声を掛ける。
「先程電話した者だ。木月(泉野)、観月(榊)、通せ。」
残りの社員二人にも声をかけ、報道陣達の中に道を作る。
途端、カメラやマイクが一斉に私達に向いた。
報道陣が囲む親子の元に着き、言った。
「こんばんは、今宵は月が綺麗ですね。先程電話させて頂きました。水箸です。」
偽名を使っている理由としては、"彼等“に真名を教えないようにする為。
真名を教えてしまえば、私達の命も危うい状態になる。
「あなたですか、私を詐欺師呼ばわりしたのは。何処の有名な霊能力者が現れると思えば、はん、可憐な少女じゃあないか。」
「先ず、娘さんと少しお話を…」
華麗に私は野郎を無視する。
泉野は野郎を殴ろうとした。だが、それを榊に止められたようだ。
「何故止める?!」
「無駄な騒ぎを起こさせるな阿呆が。は…水箸さんが困ってしまう。」
そんなやり取りは無視する。構っている暇は無いのだ。
「娘さん、貴女、以前に誰かを流産させましたか。」
淡々と述べ、相手の様子を伺う。
嗚呼、大当たりだ。
娘さんは目を見開き、小さく声を漏らす。
「嗚呼、別に、貴女の罪をどうこうしようとか、そんなんじゃあ無いですよ。警察ですが、捕まえる、祓うのはこの世のものではありませんからね?」
「………ぁ、…あな、あんな、あんなことで、あんな事でまさかぁあ、真逆死んでしまうなんてぇ!」
やはり、流産させていた。
「その、流産させてしまった女性は?」
「…高校の、クラスメイト………だけど、卒業してからは、どこに、居るのかも…」
話を続けていると、亦野郎が騒ぐ。
「ほら、それだ!私は言っただろう?!その女性の怨霊が…彼女を苦しめている原因だ!」
「黙れクソが。」
「…水箸さん…」
「木月、観月、その野郎煩い。」
それだけ言って、二人は察したように、野郎を軽く締め上げ、口にタオルを噛ませた。
まるで拷問だな。
「有難うね、さて、娘さん。その女性から箱を貰いませんでしたか?」
「ぇ、ええ、箱…あ、はい、貰いました。卒業式…仲直りの印にって…」
「仲直りの印…ねェ…」
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