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さて、聞くことも聞いた。そろそろ行くか。
「これから、娘さんにかかっている呪いを解きます。嗚呼、電話でも言いましたけど、テレビ局の方々に関して、私は守りませんからね。何が起こっても自己責任ですよ。……そこの貴方もね。」
因みに、社員達には御守りを私である。
ゆっくり報道陣と野郎を見る。
立ち去るものはいなかった。
だが、他の近隣の人達は殆どが立ち去って行った。嗚呼、其れが賢明な判断だ。
本当、知らないからね。
そう思っていると、野郎が笑いながらこう言った。
「じゃあ、お手並拝見と行こうか。警視庁特殊事件部?嗚呼、可憐なお嬢さんの方が良いか。あははっ。」
本気で此奴絞めたい…!
「あ、の…これで良いですか?」
「はい、大丈夫だと思います。其れを、娘さんに渡して下さいね。その中に吐き出してください。」
お母さんに頼んで、大きな桶。まァ、至って普通のバケツだが、其れを用意してもらった。
野郎から「何を」と言う質問は無視だ無視。
一応外に漏れないように、四隅に結界を張っているが、扉は開け放たれ、境界線は報道陣たちに踏み荒らされているため、効果は期待できない。
まァ、しないだけましだろう。
出来るだけ長くならない様に、サッサと娘さんの前にお神酒と、清めた塩を置く。
「では、娘さん。先ず指に塩を着けて、舐めて下さい。」
「はい……ァ、イッッ」
「続けてください」
清塩に触れて、“痛い"と感じているなら、かなり、邪気に身体を蝕まれているんだろう。
そして、手に着けた塩を舐めとると、娘さんは大きく咳き込んだ。
「ゴホっごほお、ぇっ、げほっ、…ほ、ほんとにゴッッ塩ですかこれ。こんな、げほっ、こんなに、苦い、のに」
「塩です。では、次はお神酒を飲んで下さい。」
娘さんは少し咳き込みながらも、小さく返事をした。
「吐き出しそうになっても、我慢して飲み込んでくださいね。」
早く呪いから解放されたいのか、飲み干した。
「ッお"え""…ぼがはっ""」
娘さんの中に巣食ってものが、びちゃびちゃとバケツの中に吐き出された。
「ヒッッッ!…ギャァァァァアッ!」
「なっ、んだコレっ!」
「人形の…手?………手か、これ?!」
「否、違う…赤ん坊の、手?」
吐き出された物に、野郎や、報道陣は悲鳴をあげた。
流石に何度も見てきた社員達も、顔を青くしている。
「次、また塩を舐めて、お神酒を飲んで吐き出す。それをお神酒が無くなるまで続けてください。全部吐き出してしまえば、味も普通に感じますから。…観月、私の代わりに彼女に付いていてくれ。」
「はい、分かりましたが、水箸さんは…?」
「呪いの元凶である箱を探す。ええと、木月、あと残りの社員、それからテレビ局の方々に、おまえ、人手が足りないので探すのを手伝って貰えませんか。この家の何処かにある筈ですから。」
娘さんによれば、可愛らしい和風柄の箱らしく、インテリアとして飾ってしたそうだが、何時の間にか無くなっていたらしい。
見つけても絶対に触れてはいけないと強く念を押し、大捜索が始まる。
報道陣達は「見付からない」「絶対放送時間延長なる〜」など言いながら捜していた。
捜索は一時間ほどで終わった。
見付けたのは報道陣の人間であった。
箱を持ち、娘さんの所へ帰れば、まだ嗚咽は続いているようだが、此方も終盤に差し掛かっている。
「…お"お“ぇぇ」
「大分吐き出しましたね。」
幸いに、呪いに使用された水子は一人だけだった。酒の量から見ても、もう終わりに近いだろう。
全て吐き出してからではないと、私が箱を祓っても、彼女の体内に逃げ込む。
「…確実に叩く。」
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