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「うっ〜〜ッ!」
「いだい痛いッッアッッアイタィ!」
もう少しと言うところで、集まっている人々、主に女性陣を中心に体調不良を訴え始めた。皆、腹部を抑えている。
座り込んでしまう人、中には倒れる人も出て来て、現場は大騒ぎとなった。
「…私、忠告したからね。此処に残ると決めたのは貴方方です。自己責任、ですから。」
娘さんの方を見ながら、云った。
その言葉に更に現場は荒れた。
人でなし、クソ野郎。
んな、ねェ?私はちゃんと忠告した。
知らないから。
「う"おぇ"……あっ"""」
最後の一つが吐き出された。
骨になりかけた、水子のアタマ…
「ッハァッ、ゴホッゴホッ」
「おっと、まだ倒れちゃあ駄目ですよ。観月、支えてあげて。」
観月は小さく頷き、娘さんを支えた。
嗚呼、早く終わらせてあげなければ。
残りのお神酒で嗽させ、新しいお神酒の線を開ける。
少ない清塩と混ぜ、飲ませた。
「味、どうですか。まだ苦いですか。」
「い、えぇ…大丈…夫で………す。」
全部飲むように伝え、娘さんはお母さんと観月に任せた。
さて、先ずは、娘さんの吐き出したものが入っているバケツを、お神酒に浸しておいた布を被せ蓋をし、箱の中に、還るように同種の結界でバケツと箱を取り囲む。
「………ふぅぅ。」
「終わったんですか?」
「否、此処からだよ。箱の中身を還さないことには何も出来ない。今、それを待っている。あ、娘さん、それ飲み終わったら休んで良いですよ。」
一応声を掛けておいたが、彼女は首を横に振った。
先程の布は次第に黒くなり、広がっていく。
「さて、そろそろかな。…………霊乱刀!」
霊乱刀
大太刀。
霊を切り裂く為の刀。
この世ではない、彼岸のモノだけ斬るため、生身の人間には害を与えない。
「ヒッ、か、刀ッ!」
「な、何するつもりだァ!」
煩い黙れ。
刀なんて霊に比べれば小さいもんだろ。
見えるものより、見えないものの方に恐怖するのだから。
「…そぉれっっ!」
霊乱刀を、箱に振り下ろした。
箱は真っ二つになり、それが原因であろう、赤ん坊の泣き声が部屋を覆い尽くした。
ゆっくりとその声が小さくなっていき、それに伴って、呪いも消えていった。
「…一件落着。終わりましたよ、お母さん。これで、もう、娘さんが悩まされることは無い。……然し、人を呪わば穴二つ。きっと、これを渡した女性は、どうなるかは分からない。切られた呪いが戻ってくるのは同義……」
娘さんは泣いた。
その涙には、自分の行った事の悔いが含まれているように感じる。
「…さァ、帰ろっか。木月、依頼料についてはお願いね。嗚呼、テレビ局方々ァ、私は自己責任と言いましたからね!あ、お金払って依頼してくれるなら別ですけど!」
それから一週間後、ある女性が、遺体になって見付かったらしい。
そして、娘さんは二度と子供を望めぬ身体になった。
だが、それは贖罪だ。自分の犯した罪…それと、これからの事を前向きに考えていると言う。
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